水色

14 ページ14

「めっちゃ好き！シャインマスカットって食べたことある？緑のぶどう、めっちゃうまいねんで？」
「そこまで聞いてへんし。笑」

ツッコミもお構いなしに、話を続けようとしたのに、

「食べるの、ほんまに好きよなぁ」

って、頬杖ついて、呆れるように笑う。

しげほっぺに寄る笑い皺が好きで、ついつい見入ってしまって、何をしゃべろうとしたのか、忘れてしまって、





「明日、俺休みやから、ぶどう狩り行かへん？」


黙り込んだ俺の代わりに、しげが話を続けてくれる。


「マジで⁉︎」
「職場の人にええとこ聞いてん。子どもさんと奥さん連れてったら、めちゃめちゃよかったらしいで？」


出張の多いしげは、振替を月曜日にとってくれる。んで、買い物付き合ってくれたり、私服の微妙なしげの服を選びに行ったり、ドライブ行ったり。



専門学校時代を謳歌する間もなく美容師への道へ突き進んだ俺には、これ以上なく幸せな、初めての青春。
俺の青春は、全部しげが教えてくれる。


「神ちゃん、あのバナナ柄の服で行こうや」
「あかんやろ。笑 ケンカ売ってんのかってなるやん！」
「バナナまみれの服でぶどう食べる神ちゃん、撮りたいっ！」
「んははっ！あかんっ、めっちゃおもろっ」


2人で笑い転げる。

笑いが止まらない、なんて大人になってあったっけ？しげと出会ってからは、しょっちゅうこんなん。
しげとおると、なんでもない日常が楽しくて笑顔で溢れる。


穏やかで楽しいしげとの時間は、俺にとって何にも代え難いものになっていた。

15→←13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す