Colorful stories 7（W．短編集）

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その日から、神ちゃんはうちに来なくなった。
今までは、仕事が落ち着いて、俺が「もうええよ」って言うまでずっとそばにおってくれたのに。

楽屋でもぎこちない。
話すのは、話さなあかん用件だけ。





「しげ、ちょっと、」

照史に手招きされて、楽屋を離れる。


「モンチとなんかあった？」
「なんで？」
「2人とも変やで？口きいてへんし。添い寝もしてへんのやろ？」

クマすごいで？なんて、自分の健康的な下まぶたを、指差した。

さすが照史やなぁ、なんて感心してる場合やないのに。
コイツなら大丈夫かなって思って、あの日の出来事を、頭の中から引っ張り出す。

言葉にしてしまうと、あっけなくて。それはうまく伝わったのかどうかわからない。



「なるほどな、」

呟いて、何やら考え込んでしまった照史。その口が開かれるのをコーヒーを飲みながら黙って待った。



「モンチな…」

やがて、決心したかのように、まっすぐに俺の目を見て話し出した。

「添い寝、しんどい言うてたんよ。けど、自分がしげを助けてやれるのが嬉しいって。自分にしかできひんのが、嬉しいって」
「しんどい、て…」
「そら、しんどいやろ。好きな人に気持ち隠し続けながら、ずっと一番近くにおるて」
「……は？好きな、人て…」
「モンチはな、お前に振り向いてもらいたいとは思ってへんのよ。ただ、お前を静かに思ってるだけ。お前を支えたいだけ。やから、必死に隠して寄り添ってきたわけよ」


神ちゃんの顔を思い出そうとしても、笑顔しか出て来おへんねん。

「人の恋心バラす趣味はないけど、言うとかな、モンチがあんまりに可哀想やから。せめて、普通にしてやって。ちゃんとシンメでおってやってや」

目の周りを真っ赤にして、訴えてかける照史に、俺はなんも返せへんまんま。
照史の遠ざかる背中を見送った。

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