片翼の天使 Ⅱ (ページ48)

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鶴蝶と別れた後、
蘭と一緒にある場所へと向かった。

蘭｢懐かしいなぁ…｣

" 関東事変 " の抗争地。
横浜第7埠頭

コンテナの上に座って、静かに波の音を聞いてると
蘭は何も言わずに私に背を預けて一緒にいてくれた。

夕日が海を照らし、あっという間に辺りは暗くなる

蘭｢帰るか、｣

A｢そうだね。｣

バイクに跨り、蘭の後ろを着いていく
見慣れた懐かしいこの街を後にした。

ニィの言った通り、夜の街は綺麗だった。
いつも後ろに乗っていたから
見えなかった景色が目の前に広がる

ニィの形見(バイク)に乗って
ニィの形見(ピアス)を身につけてると
私のすぐ隣にいるような気がしたの

スピードを上げ、蘭の隣を並んで走る
目が合うと｢気持ちいだろ？｣と笑った。

横浜から六本木まで約1時間。
長いようで短く、あっという間に家に着いた。
ガレージの中にバイクを止めると
車体に体を預けて目を閉じた。

" かっけぇだろ？このバイク "

" おい、危ねぇから下りろって！
オマエはこっち、俺の後ろ。
いつか乗れるようになったら
そん時は一緒に走ろうな、"

蘭｢Aー、まだそこにいんの…って寝てんのかよ。｣

バイクにもたれながら寝こけたAを抱えて歩くと
無意識に俺の服を掴んで小さく、寝言を呟いた

A｢…き……｣

蘭｢ん？｣

なんだ？｢き？｣
あぁ、竜胆大好きって言ってんの？
可愛いなぁ…あいつに見してやりてぇ。

ソファーに寝かせて頭を撫でる。
久しぶりに飯でも作ろうかと立ち上がれば
グンッと後ろに引っ張られた。

蘭｢あっぶね…
おい、A起きてんなら手伝…｣

泣いていた。

ゆっくり頬を伝って落ちていく涙を拭って
涙で張り付いた髪を手で除ける。

" 片翼の天使 "

今じゃそう呼ばれるこいつには双子の兄がいた。
" いたんだ " 今はもういない…
大将はあの日、鶴蝶を庇って命を落とした。
雪の降った日だった。

さっきから寝ながらでも離さずに
手に握ってるのはバイクの鍵。
黒と白の犬のキーホルダーが付いてる

片手で俺の服を掴んで
小さく魘されながら、誰かを呼んでいた。

A｢あに…き…｣