片翼の天使 Ⅱ (ページ44)

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A｢蘭〜、ねぇ起きて、｣

身体を揺すっても
んー、と軽く返事が返ってくるだけ。

それでもガッチリと腰にまわった腕は私を頑なに離さない。

A｢蘭ちゃーん｣

蘭｢ん……｣

そうだ、蘭は朝弱いんだった…
いつもならまだ起きる時間じゃない。

こんなに気持ちよさそうに寝てるのを
無理やり起こすのも可哀想だしなぁ

たまには二度寝もいいかも、
そう思って目を瞑った。

なんだろう、
誰かに触られてるような感覚がする、
でも不思議と、この手は嫌じゃない…

蘭｢起きた？？｣

私の頭を撫でながら、ふわっと笑う。

A｢んー、｣

カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて
布団の中へ潜ろうとすれば剥ぎ取られた。

蘭｢竜胆のとこ行くんじゃないの？｣

A｢あっ！！！！！｣

光の速度で支度を終えた私が
早く早く！と着替え始めた蘭を急かす。
上裸姿のまま支度をする蘭の後ろを
てってけてってけとついてまわる。
ヒヨコみてぇ、とバカにする蘭が楽しそうに笑った

蘭｢姫、どちらまで？｣

A｢竜胆の所へ！
運転手さん、なる早でお願いします！｣

蘭｢りょーかーい。
しっかり掴まっとけよー｣

ブォンっと勢いよく走り出したバイクは
風を切って次々と車を追い越した。

家から病院まで30分はかかる距離なのに10分でついた。

それもそのはず、法定速度を余裕で越えていた。
スピード違反で追いかけてきた警察を難なく振り切った辺り、
慣れてるな…悪いやつめ。

竜胆の病室がある階に着けば
廊下がなんだか賑やかで、人で溢れていた。
てゆーか、ほとんど女子。

A｢ねぇ、蘭。
竜胆の病室ってあの辺りだよね…｣

キャイキャイ騒ぐ女子達の声に耳を向けると

｢ねぇ！本物の竜胆君なんだけど！
やばいかっこいい♡｣

｢彼女庇って怪我したんでしょ！？
やる事もイケメンかよー、
彼女になりたい。｣

｢てことはさ、蘭くんも来たりして…｣

｢そんな事、あるかも…どうしよう！｣

狼狽え始めた女子達のすぐ後ろに
本人がいる事を知らない様子。

蘭｢どけ、邪魔｣

開けられた道を進む蘭の背中を
追いかけると愛しい彼がいた。