片翼の天使 Ⅱ (ページ27)

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リビングに戻れば蘭の姿は無くて
少し前に出掛けたそう。

竜胆｢A、ここ座って｣

と、自分の足の間に座れと私を見つめる。

言われた通りに竜胆の前に座れば
ふわっと抱きしめられた。

竜胆｢オマエを泣かせるのは誰？
オマエをそこまで苦しめるのは誰なんだよ｣

今にも消えてしまいそうな声

あの時と同じだ、
また、竜胆にこんな顔させて…

A｢なんでもないよ…本当…｣

竜胆｢A、言って。
俺に出来ることならなんだってするから…｣

A｢竜胆…｣

竜胆｢もう嫌なんだよ、見たくねんだよ。
オマエの辛そうな顔見んのも
オマエが俺のいない所で泣いてんのも｣

私は幸せ者だなぁ
こんなにも自分の事を想ってくれる人がいて

A｢じゃあワガママ言ってもいい？…｣

竜胆｢いいよ。｣

竜胆｢こんな事でいいの？｣

A｢うん、
やっぱり竜胆の側って落ち着く…｣

" 一緒に寝て欲しい… "

そう言うと竜胆は少し顔を赤くして
部屋に連れて行ってくれた。

少し大きめのベットで竜胆にくっついて
コツン…と彼の胸に顔を寄せると、大好きな香りに包まれた

小さい頃、ニィはよくこうやって抱きしめてくれた。
私が眠れない夜は一緒に寝てくれてた。

A｢夢を見たの…｣

竜胆｢夢？｣

A｢そう、昔の夢。
ニィと鶴蝶と雪が降った日に外で遊び回ってさ…｣

子供の頃の記憶…
今は思い出すだけで苦しくなる過去

そんな私の話を
竜胆は何も言わずに静かに聞いてくれた

A｢今も…ニィの声が聞こえるの
オマエには俺が救えるかって…｣

竜胆｢A…｣

A｢ニィがいないのに…
まるで何も無かったように笑ってる自分が…許せないの｣

ニィのいない毎日に慣れてしまう自分も

毎日のように声を枯らして泣き叫んだ
いるはずのない兄の幻影を追いかけた

たまにわかんなくなる

当たり前のようにいたニィがいない

それがどういう事なのか理解できなくなる

そういう時はいつも頭が真っ白になって
右も左も、上も下もわかんなくなっちゃうの

何が正しくて……何が間違っているのか……

その度、同じ事を思う…

ニィは…

私が殺したんじゃないかって…