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32話 惹きつける ページ32

トマトクンSide
________
 
 
 

カチャカチャとキーボードの打つ音が鳴り響く。

俺はそっとその場に足を踏み入れた。





「はじめさん」





編集部屋でじっとパソコンを見つめる姿。

俺の声に、はじめさんは後ろを振り返った。





「ともたか?どした」





「上着借りてもいいっすか?」





はじめさんは、ゆっくりと立ち上がり

クローゼットを開ける。




左右を見渡し、上着に手をかけた時だった。

固まったように動きが止まる。





「あれ?さっき着てなかったっけ?」





…さすが、はじめさん。





「Aさんに貸しました」





俺がそう言うと、急に手が引っ込んだ。





「…なんで?」





はっきりと見開く、睨むような目つき

それはまるで





…俺を敵視している表情だった。





驚きを表に出さないように平然を装い

俺はすぐさま弁解をする。





「Aさん、上着に醤油こぼしたみたいだったんで…」





「あー、なるほどね」





納得したように返答すると、


上着を無造作に取り出して俺に向かって投げた。




はじめさんは気づいてるのだろうか。

自分の行動がおかしくなっていることに。





「てか、だいち来ないんだけど」





約束の時間より15分過ぎている。

動画の最終チェックを一緒にするらしい。





「Aさんにだいちくんを起こすよう頼んだので来ると思います」





「は!?それ、やべーじゃん!」





はじめさんは、スマホを片手に椅子から飛び降りた。



その反動で椅子がくるくると回転を始めながら

ドアノブに手をかけた。





「待って下さいよ。起こすだけじゃないすか」





何で。

そんなに気にすることだろうか。





「…今のあいつは、普通じゃないから」





そう言い残し、足音を立たせて走り去ってく。





俺にははじめさんの感情がさっぱりわからない。

そこまでAさんにばかり構うのか。




…きっと惹きつける能力でもあるにちがいない。




俺は、みんなの態度が急に変わっていることに



受け止めきれなくて、俺だけついていけなくて

そんな子供じみた想像ばかりしてしまう。





「はじめさん〜待って下さいよー」





俺にも分かる日が来るのだろうか。


眼鏡の位置を整えて小走りで編集部屋を去った。
 

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作品ジャンル:恋愛
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影裏(プロフ) - 更新まってます!! (2022年6月6日 4時) (レス) @page33 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
カシスちゃん - 次のお話が気になります! 更新待ってます (2019年10月24日 2時) (レス) id: df66e26c2f (このIDを非表示/違反報告)
名無し22819号(プロフ) - コメント失礼します、1話から全部読みました!いいお話ですね!一つ質問なんですが、このお話は誰オチですか? (2019年10月8日 13時) (レス) id: 422de7f24a (このIDを非表示/違反報告)
麗音 - 最近見始めました! (2019年9月21日 9時) (レス) id: f13e29755c (このIDを非表示/違反報告)
みりんみみ(プロフ) - かなちぃさん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません。ありがとうございます!いつでも振り返られるように工夫してみました♪ (2019年8月17日 13時) (レス) id: d6ce8c8a6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みりんみみ | 作成日時:2018年12月23日 15時

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