暖かさの裏側 ページ30
＊＊
左肩に感じる重みで目を覚ました。どうやらもう朝のようだ。目を擦って辺りを見る。室内では動き出している受験者もちらほらいて、静まりかえっていた昨夜よりも色々な音がする。
肩の重みの犯人は、いつのまにか私の肩に頭を乗せて完全に爆睡しているキルアのようだ。そんな体勢で、首を寝違えても知らないぞ。
「キルア〜〜」
…駄目だ、起きない。ていうか起きる気ないな？でも私はあと５分、とか容赦はしないぞ、寝顔が世界一可愛いなら別だけど。
クラピカ「A、起きたか」
「うん、おはよ〜」
昨日は眠くなるまでクラピカと話していた。何を話したかは詳しく覚えてないけど、確かこの間シャルに教えてもらった中華の話をしたと思う。
クラピカ「フフっ、随分と懐かれているな」
隣で眠るキルアをみて、クラピカは控えめに笑う。
「困ったことに、キルアってすごく良い子なの」
クラピカ「優秀なのは、良いことだと思うが？」
「確かに優秀って１つの強さだと思うわ。でも、そのせいかまだ12歳なのに寝てる時くらいしか甘えてくれないし、時々すごく寂しそうな顔をするの」
飼い犬が自力で餌をとれなくなるのと同じで、殺し屋の教育を受けたキルアは甘え方を知らないみたい。それってなんだか、ずっとに一人でいるみたいに寂しいことだ。あぁ、でも、今は特別寝てるってことにしといてあげるよ、キルア。
私はキルアの頭にポン、と手を置いてなるべく優しさが伝わるように撫でた。
クラピカ「…そうか。確かに彼は年のわりには少し冷めているところがある」
「フフっ、クラピカも人のこと言えないけど………あぁ、そうだ！このことは内緒だよ、子供扱いするなって怒られちゃうから」
人差し指を口にあてて笑うと、クラピカはしっかり頷いた。でも、わかってないよクラピカ。本当に冷めているのはこの暖かい目をしている私なんだ。暖かい手をしている私なんだぜ。
キルアはゆっくり瞼を開いた。まるで今起きたように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナツメ(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます！奈乃さんからのお言葉を励みに頑張ります！ (2017年8月21日 18時) (
レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
奈乃(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2017年8月21日 18時) (レス) id: 26a98954d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナツメ | 作成日時：2017年8月2日 12時
