速度低下 ページ19
爽快な風が止んだ、ほとんどまばたきをするくらいの間、六枚のトランプがまるで手品みたいなスピードで、木々の間から飛び出して、消えた。
キルア「…ッ」
私の手の中に確かに収まっているカードを見て、キルアは歯軋りをするような苦い表情で飛んできた方を睨み付ける。私は、手の中のカードを見て、自分の意思で表情を、作った。
「ねぇ、君。これには、意味があるの？」
振り返って尋ねると、物陰から殺気を隠そうともせず、にっこり微笑みながらヒソカが姿を現した。
ヒソカ「君の想像に任せる♦それより君と話がしたい♣いいかい♥」
気持ち悪い程の殺気に、キルアはじっと身構えている。本当に良い子だ。
「今じゃなくてもいいかい？だいたい私は今少々苛ついているんだ。友人と楽しく談笑しているところを君に邪魔されたからね。悪いけど、こんな気分で君と面白い話ができる自信がないよ」
自分で思ったよりも、冷たい声が出た。どうやら、彼と私は相性が悪いようだ。
ヒソカ「…………そう♠それじゃあまた出直すよ♦」
ヒソカはにっこり笑って、気味が悪いほどあっさり引き下がったと思えば、また物陰へと姿を消した。ふっ、とキルアに視線を戻すと、何だか恐ろしい表情を浮かべていた。
「キルア」
応答する気配はなく、ただ地面を見つめている。上の空だ。ふふっ、地面を見つめているのに上の空か。おかしいな。下の地、と言った方がなんだかわかりやすい気もするが。なんて言っている場合ではない。忘れかけていたが今は試験中だ。私たちはかなり遅れをとっているだろう。
「キルア」
もう一度呼びかけると、ふっと意識が戻ったように私を見上げた。その顔には確かに、不安と恐怖、そして焦りが混沌したような色が浮かび上がっていた。
それを見て、ようやく私は気がついた。
もしかして嫌な殺気を出していたのはヒソカだけではなかったのかもしれない。傍観していたキルアには、目の前にいる二人が自分とまるで違う人種に見えてたのではないだろうか。そうだとすると、まずい。というか、これは申し訳なけないに近い気持ちだ。
浮かばれない顔で、何も言わないキルアを見て自分の気持ちも沈んでいくのがわかる。生憎、私はこういうとき、どうしたらいいのかわからない。私に怯えているキルアにどう接するのが正解なのか、まったく見当もつかない。
生きるために身に付いた自己防衛のための強さ。それを身をもって感じるとき、自分の情けなさを知ることとなる。
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ナツメ(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます！奈乃さんからのお言葉を励みに頑張ります！ (2017年8月21日 18時) (
レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
奈乃(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2017年8月21日 18時) (レス) id: 26a98954d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツメ | 作成日時：2017年8月2日 12時
