ビターチョコ・シンドローム【赤】

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「えっ、大毅風邪？」

望「らしいで、あんなに健康に気遣ってんのに(笑)」

「……」



一限が始まりそれでも来ない大毅に心配のLINEを送ったが、昼休みになっても返信は返ってこなかった。

いよいよ心配だから家に行ってやろうと思っていたが、学食へ向かう途中に望くんが私に大毅とのトーク画面が映ったスマホを向けてそう言った。

あの大毅が、風邪…


大学3年間、大毅が風邪で休んだことなんてなかった。

むしろ風邪を引きやすい私を見て、鈍臭いと嘲笑うくらい。



「……心配やなぁ…」

望「ほんまなー、Aお見舞い行ったら？」

「え？」

望「俺も行きたいねんけど、バイトやし…」

「……」



生憎今日は、授業の後何も予定がない。



「……行こう、かな」

望「お、じゃあこれ渡しといてくれん？」



望くんが私に差し出したのは、1冊のノート。



望「これしげから借りててさ、テスト近いしはよ返した方がええかなって」

「うん、確かに(笑)」



私はそのノートを受け取り、望くんとは違う授業へ向かった。

この授業は本来大毅と二人で受けているため、今日初めて一人で受講することになる。

一人で座る講義室の長机は寂しい。

いつもなら、隣に座る大毅がちょっかいをかけてきて鬱陶しいと喧嘩しているけど…



「……」



一人の講義って本当に寂しいことに気がついた。

私は講義も程々に、シャーペンをくるくる回しながら大毅に教えられるだけのノートを取る。






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