声が出ない君へ－佐野玲於－ (ページ18)

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それは突然だった

律「ちょっと2人とも…」

玲於「俺、都合いいだけの男じゃないよ？」

“だからそういうつもりじゃないって”

些細なことから、俺とAのケンカが始まった

“謝ってるのに”

玲於「いいよ、もう気にしてないから」

“気にしてない顔じゃないから、こうやって言ってるんじゃん！”

玲於「いちいち突っかかってくんな」

“そっちでしょ！”

永久「A、ペンの先が壊れちゃうよ」

律「永久さん、どうにかしてくださいよー」

永久「Aって意外に頑固だからね」

律「玲於もです。玲於の場合見たまんまですけど」

玲於「もういいや。帰る。行くぞ律」

律「え、Aちゃんのこといいの？」

玲於「知らない」

律「今回は、Aちゃんもあれだけどさー、お前男でしょ、許してあげなって」

玲於「だから知らないって」

Aの顔を見ず、背を向けた

はあ、ケンカの内容はくだらないから言いたくないけど

俺は悪くないはず

でも、Aは謝ってるし…許しても

いやいや、今さらどんな顔すればいいんだって話だよ

貴女「…れ、おく！ごめ…っ」

玲於「え？」

永久「え？」

律「え？」

貴女「……え」

玲於「A、今…」

貴女「で…た」

まだ、声はカスカスだけど確実に声が出てる

永久「A…」

玲於「A！」

俺は駆け寄って、Aを抱きしめた

玲於「すげー、まじで！」

貴女「…れお、く」

玲於「うん、聞こえる」

律「やばい、俺泣きそう」

貴女「……あ」

玲於「まだ完全に出るってわけじゃないんだね。無理はしないで。ちょっとずついこ」

貴女「…ん」

永久「そろそろ離れてくれる？だいたい、なに抱きついてんの」

玲於「体が勝手に」

永久「A、良かったね。ほんと良かった」

“ありがとう。でも、少ししか声出ない”

永久「それでもいいんだよ」

“玲於くん、ほんとにごめんなさい”

玲於「もういい！ケンカとかどうでも良くなった」

永久「今日、病院行こっか」

貴女「…ん」

玲於「じゃあね、A」

貴女「…あした、ね」

律「ばいばーい！」

突然、Aの声が出た

まだまだ声は小さいし、すぐには出ないみたいだけど、確実に会話ができた

玲於「過去一嬉しいかも」

律「玲於が素直になるとそれもそれでキモイ」

玲於「あ？ふざけんな」