ONE-WAY LOVEs

★ ページ18

うだるような暑さの中、それを感じさせない明るい声、笑顔と軽やかな足取り。
どこを見ても"幸せ"しかない空間の中で、俺は誰にもばれないようにそっとため息をこぼす。


世界一有名なキャラクターのいる某有名テーマパーク。
人混み嫌いの俺が土曜日なんて週で１番混雑する日にこんな場所にいるのは、隣を歩く彼女のご機嫌取りのためで。
どんなに乗り気じゃなくても、この間盛大にやらかしてしまった俺には拒否権なんて持ち合わせてなかった。

強制的に買わされたキャラクターのカチューシャを頭に着けながら、三桁を越す待ち時間が表示されたアトラクションの列に並ぶ。

「これなら涼介でも乗れるでしょ？」

絶叫系のアトラクションが苦手な俺にかけられた彼女の言葉。
それにyesともnoともとれるような曖昧な返事をして、そういえば前にも同じような事を言われたな‥なんて記憶を探ってみる。

放課後、仲の良いクラスメート数名で来た前回は俺もこの幸せ空間にちゃんと溶け込めてた。
男だけだったのもあってかバカみたいなのりで皆でお揃いのカチューシャ買って、バカみたいにはしゃいでいっぱい写真も撮って。
絶叫系が苦手な俺に気を使って、大ちゃんがおんなじように確認してくれたんだ。
その時に伊野尾ちゃんも絶叫系が駄目な事が分かって、途中からパレード組と乗り物組に別れて別行動になって。
パレード組は伊野尾ちゃんと俺の二人だけだったけど、それでも楽しくてずっと二人で笑いあってたっけ。

‥そんなに昔の事じゃないのに夢みたいな時間。
今ではもう、視線すら合わないのに。






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