ただ、愛してる。君を。【鬼灯の冷徹】

予言か妄想か ページ13

貴女side

自分の目の前で起こっている光景をぼんやりと眺めながら、私は自分の頬をつねる。

…痛くない。





不意に、真ん中にいた黒い着物の男性が、同じ真ん中にいる隣の女性を優しく抱きしめた。

そして口付けを落とした。

その女性は嬉しそうに照れくさそうに幸せそうに笑い、二人の周りに円になっているみんなも幸せそう。

…これは、何を意味するのだろう。

私への未来の予言か、私の頭の中で勝手に創造された妄想か。

その様子を見ていると、なんだか胸が締め付けられた。

ふと、真ん中の鬼の男性が此方を向いた。そして微笑まれた。

それを見ると、私の周りが真っ暗になっていった…

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貴女『…はっ！！』

目を開くと、森の入り口にいた。

さっきまでお母さんと会話をしていた場所だ。

…今のは夢だったのか…

辺りを見回すと、もう夕刻という時間帯になっていることに気がついた。西の空には蜜柑色に光を放つ夕日が見られる。

お母さんと話していたのは朝だったのに…

自分が長い間夢の中にいたことを自覚する。

そういえば、最近まともに寝られていなかったし、お母さんと居て、安心して寝られたのかな…私。

そういえば

貴女『…あれ？お母さんは…？』

お母さんはもうそこにはいなかった。

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翌日。

昨日あの後。村長に自分の母親であることを隠し、「私のお客さんの女の人は？」と聞くと、「もう帰った」と言われた。

…最後に、ちゃんとお別れをしたかったけど…我儘ばかり言ってられないよね。

お母さんも不治の病で辛いんだし…
……死んじゃうんだし。

私に、病気を治す力があったらな…

…薬の勉強でも始めようかな。

そんな時間、私にはないか。仕事あるし…

そんなことを考えている私だけど。







心の奥はまた大切な人を失うという、悲しみでいっぱい。悲しくて哀しくて仕方がない。

…もう泣きたい。でも泣かない。

涙をぐっとこらえる。


そのまた奥には、昨日見た長い長い不思議な夢を閉じ込めた。

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