. ページ8
「ん〜！楽しかった〜」
「ゲーセンにして正解やったやろ？」
「はい。来てよかったです」
彼が行きたいところってだけだし私自身も楽しめるかどうか不安だったが、思いのほか楽しめて気づけばお昼過ぎになっていた。
お腹も空いてきたのでゲームセンターを出てしばらく歩いていれば、最近出来たばかりのカフェが目についた。
「ここにしようかな」
「なんとも洒落た店やな〜。Aには似合わへんわ〜」
「うるさいです〜！」
皮肉を込めて言えばそんなんで怒るなんてお子ちゃまやな〜、と茶化されてしまった。
店内の窓側の二人がけの席に案内されると彼は自分もお客のように座り出す。
そんな彼を思わず凝視してしまうが、幸い店員さんは気づいていないようだった。
「ふふ、デートみたいやなぁ」
「死神さんとデートはちょっと…」
「えー、いけずやぁ」
ぷく、と頬を膨らます姿に胸が少しきゅんとした気もしないが、軽く頭を横に振ってメニューを眺めた。
トマトの冷製パスタ美味しそうだなぁ。
でも王道のカルボナーラでもいいなぁ。
スイーツも美味しそう、なんてひとりで見ていればだんだん彼は飽きてきたのか私の髪を弄り始めた。
「こら、机の上に乗っちゃいけません」
「乗らへんとAの髪届かんのやもん」
「触らなきゃいいでしょ…？」
「やー、触る」
子供のように駄々を捏ねて髪を弄り続ける彼。
はあ、とため息をついて彼の手が泊まるのを待てば数分後には満足したのか机から飛び下りて椅子に座り直した。
机を軽く拭いて店員さんを呼べばあら、と声をかけられた。
「可愛い髪型になさったんですね。すごくお似合いですよ」
「えっ」
思わず窓の方を見て、そこに映る自分を見つめた。
そこには先程とは違う軽い三つ編みを緩く解いたような髪型になっていた。
「えーっと…気分転換で…」
「ふふ、素敵です。ご注文は何になさいますか？」
「トマトの冷製パスタとショートケーキでお願いします」
「かしこまりました」
なんだか恥ずかしくなってメニュー表で顔を隠しながら彼の顔を覗き見すれば、ばち、と目が合ってしまう。
「その方がここの雰囲気にあっとるで」
「勝手にしなくても…」
「ふふ、可愛いからええやん」
そんなこと言うなんて、本当にずるい人。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 533人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
若草 翠 - 素晴らしい作品でした。主人公の感情が痛いくらいに伝わってくる文章の書き方で、スッキリとした終わり方が印象に残っています。これからも頑張ってください！ (2022年4月6日 21時) (
レス) id: 3991d49295 (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - 神野里彩さん» はじめまして。ご丁寧にありがとうございます。そう言っていただけると私も書いてよかったです…！少しでも心に残る作品になってくだされば私も嬉しいです…！こちらこそ改めて読んでいただきありがとうございます。 (2019年7月29日 2時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
神野里彩 - 初めまして。こんにちは。貴方の作品がオススメに出てきたので読んでみました。普段あまり感動する映画とかで泣かないのですが、最後まで一通り読み終わったら涙が止まりませんでした。芽樹さんとても素晴らしい作品を読ませて頂ありがとうございました。 (2019年7月28日 15時) (レス) id: 1e17a0cebe (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - フラルさん» そう言っていただけて嬉しいです！お読みいただきありがとうございました！ (2019年7月12日 8時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
フラル(プロフ) - 評価が1回しか出来ないのが悔しくなるほどとても素晴らしい作品でした！！！どのエンドも感動しました！ (2019年7月11日 0時) (レス) id: 8607e8bac4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：芽樹。 | 作成日時：2019年1月7日 23時
