ろっこめのおんがえし ページ7
「それじゃあ行ってくるね」
「いってらっしゃい。お仕事頑張ってくださいね」
「うん、ありがとう」
控えめに手を振る彼の頭を撫でて家を出る。
昨日の雨が嘘みたいに空は快晴だった。
本当は彼を1人にするのも不安だが、仕事を休む訳にもいかない。
けれどやはり不安なものは不安だ。
携帯ではなくとも家に固定電話を置いた方がいいかもしれない。
考えれば考えるほど嫌な考えは止まらないもので、ちゃんとレンジは使えるのかなぁ、とか勝手に家を出たりしないだろうか、なんて頭を悶々として仕事に集中できないまま一日を終えてしまった。
「お疲れ様でした！お先に失礼します！」
上司や同僚に頭を下げて急いで仕事場を出る。
家に着いた頃にはなぜか息が絶え絶えだった。
これが歳ってやつなのか、と少し落ち込みながら家の扉を開けば思わず固まってしまう。
椅子や机は倒れていて、しまいには床は真っ赤に染まっている。
震えた足で一歩踏み入れればキッチンの端っこで足を抱えて頭を埋める彼の姿が目に入った。
「ショッピくん、大丈夫？何かあったの？」
そう聞けば、ゆっくりと頭をあげる彼。
紫陽花色の瞳は虚ろになって揺れていた。
「ショッピくん…？」
「おれ…」
1粒、また1粒と2つの瞳から涙が零れ落ちる。
慌てて鞄からハンカチを取り出そうとすれば、その手を掴まれる。
「俺、Aさんが少しでも楽になるようにってやっただけなんです…！」
へ…？と間抜けな声が口から漏れた。
どういうこと？と聞いても彼は口を開こうとはせず、私は眉をひそめて辺りを見渡した。
…あれ？
シンクには焦げたフライパンとトマト(だったであろうもの)が転がっている。
もしかして、と床に散らばった赤いものに触れればべっとりとしていて、トマトの香りが鼻についた。
なるほど。全てが繋がった。
「ショッピくん、夕飯つくろうとしてくれてたんだね」
「…けど、俺失敗して…部屋もぐちゃぐちゃにしちゃったから、どうすればいいかわかんなくてっ…」
また泣きそうになる彼の頭を撫でてぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう、嬉しいよ」
「やけど俺、Aさんの仕事増やすだけでっ…」
「気持ちだけで凄く嬉しいもん。謝る必要ないよ。それに汚れたのは掃除すればいいだけだから」
手伝ってくれる？と聞けばこく、と小さく頷いて走ってタオルを取りに行く彼。
その背中を見送ってから私も立ち上がった。
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rimu@他力本願寺建設完了！ - 最後の「(名前)先輩」ってどういう意味なんですか？自己解釈だとまた転生して､､､。ってことですかね？と言うか泣きました。目からアラル海。 (2022年5月31日 22時) (
レス) @page31 id: 8604b433e3 (このIDを非表示/違反報告)
零こうたろう(プロフ) - コメント失礼致します。いや本気で泣く、、、めっちゃ感動しました！最後が以外だけど、そこも好きです！本当に感動(語彙喪失) (2022年4月4日 11時) (レス) @page27 id: 8d40178834 (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - 優希さん» 最後までお読みいただきありがとうございます。自分ではあまり上手くかけたとおもっていなかったのでそう言って貰えるととても嬉しいです…！ (2019年7月31日 8時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - 舞刃さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。待っていていただいたのに拙い文での返信となってしまい申し訳なかったです…。 (2019年7月31日 8時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 最後まで読ませていただきました。最後では、泣いてしまいました。とても感動できるいいお話でした。手紙の内容や、最後転生？して反対の立場としての出会い、恩返しをする前の出会いが描かれていて更にうるうるとしていましました。素敵な作品をありがとうございます。 (2019年7月31日 0時) (レス) id: dbd9bf7781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芽樹。 | 作成日時：2019年7月16日 20時
