【OL】すきです【短編集】

前のことだから ページ9

【過去捏造してます】


俺が


誰にも言っていない昔の話。







「ｯいかない、で...？」



またか。


何回目の夢だろう。


いつもの、あの夢。


目元を拭うと、袖が濡れる。


最悪だ。


きっとあれか？


牧が居なくなった時のこととも


重なったから？


そんなわけないだろ。


だって、だって牧は


...本当に俺と居てくれる？



「くそ、女かよ...過去のこと引きずるとか...」



ガシガシと頭を掻きながらそう呟く。


いつだったっけ。


父ちゃんが出てったの。


いや、あんなの父親じゃない。


母ちゃんの居ない時に女連れ込んで。


勝手に出てった。


あの時は俺も、ちっちゃいし、息子でもあったから


そりゃ好きだったさ。


そんな人に置いていかれる気分。


嗚呼、やっぱり重なってたんだ。


好きだった人が俺のそばから離れていく。


こんな言い方だと、母ちゃんのことが


嫌いだったから泣かなかった、みたいに


なるけど、母ちゃんは連絡さえすれば


会えるし。


牧は、きっと俺が電話しても


出てくれないだろう、っていうのもあって


きっと泣いたのかなぁ。


俺は、ずっとアイツと居たい。


あんな父ちゃんなんかよりも


牧が居てくれたら俺は充分なんだよ。



「...牧、絶対居なくなんなよ」



また目元を拭ってから、そう呟いてベッドを降りる。


貴方に抱きしめてもらうため。


怖かったって。


本当にお前が好きだって。


しっかりお前に伝えるから。


昔のことは、少しだけ待ってて。


でもそれまで


俺と一緒に居てください。


牧と一緒じゃなきゃ、俺嫌だから。

月【ハセハル】→←どっかのチームの頭

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す