521話【結弦side】 ページ30
全日本の開会式が終わって、みんなぞろぞろと会場を出ていく。
俺も荷物を持って立ち上がり、Aちゃんの姿を探した。
あ、いた。
いたけど……なんで刑事と喋ってんの?
しかもあんな楽しそうに。
確か、挨拶くらいしかしたことないっていってたよな……。
なんか二人っきりにしとくのが嫌で、並べられた椅子をスルスルとかいくぐって二人の元へ向かった。
結弦「二人でなにしてんの?」
あくまでも冷静に。
本当は今すぐにでもAちゃんを俺の腕の中に閉じ込めてしまいたいけど、場所が場所なだけにそうはいかない。
俺の声に反応した二人が、同時に振り向いた。
その瞬間、Aちゃんの表情がパッと明るくなったのはちょっと嬉しかった。
「ゆづくん!今ね、田中さんとお話してたの。初めてちゃんと話すのに、そんな感じしないねって」
結弦「そっか」
楽しそうにニコニコしながらそう説明してくれるAちゃんに、良かったねと返す。
それを刑事は、また意味深なニヤけた顔で見てるし。
結弦「Aちゃん。先にブライアンのとこ行ってて。俺、刑事とちょっと話してから行くから」
「そう?分かった。じゃあまたあとでね」
ヒラヒラと笑顔で手を振りあって、Aちゃんの姿が見えなくなったところで刑事に向き直る。
刑事「結弦、顔が怖いよ(笑)」
結弦「まじでAちゃんに聞いたの?」
刑事「聞いてないよ。本当にただの世間話だけ。……今の結弦、加賀美さんの父親?それともお兄ちゃん?それとも……あのニュースの通り?」
結弦「言わないっつったじゃん。もー、しつこいよ?」
刑事「結弦が話してくんねーからだろ」
結弦「なんでそんなに知りたがるの」
刑事「んー……加賀美さんが可愛いから?」
結弦「……は?」
自分でもびっくりするくらい低い声が出た。
俺の質問に対して答えになってない言葉を発した刑事は、フッと笑って座っていた椅子から立ち上がる。
刑事「冗談だって(笑)んな怖い顔すんなよ、片想い中の結弦くん」
なにも言えないでいる俺の肩を、ポンポンと叩いて刑事は会場を後にした。
片想いじゃねえし。
言えるもんなら、みんなに言いたいよ。俺ら付き合ってます、って。
でもそんなことしたら、俺らも周りも大変なことになるって簡単に想像できる。
だから今はまだ、言えないんだよ。
この幸せを、壊したくないんだ。
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優里奈(プロフ) - エミルさん» 嬉しいお言葉……ありがとうございます(*^^*)付き合いたてってこんな感じかなあ……?なんて考えながら二人を動かしてます(*>_<*) (2021年10月3日 6時) (レス) @page21 id: bb1624f74d (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 初々しい二人の好きが溢れていて、可愛いカップルですね!こちらも幸せな気持ちになります(*´ω`*) (2021年10月2日 23時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - らっきさん» わー!ありがとうございます(≧∇≦)らっきさんの作品も楽しく読ませて頂いてますよ〜(*´ω`*)2人がくっつくまでの前置きが長すぎましたね(^ω^;) (2021年9月24日 22時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - こんばんは!いつも読んでます(*^^*)ついに、2人のお付き合いが始まりますね!更新頑張って下さい! (2021年9月24日 21時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - エミルさん» 私も書いていてドキドキしてました〜!一途なゆづくんに春よ来い!ですね( *´艸`)頑張って続き書いて行きます(p`・ω・´q) (2021年9月23日 23時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優里奈 | 作成日時:2021年9月23日 22時