18話《2011年全日本選手権 EX》 ページ19
「えーと……」
メダリスト・オン・アイスの出演者全員で、グランドオープニングの打ち合わせ。
大体の動きの説明を受けて、リンクに出てそれぞれのポジションに移動する。
エキシビジョンやアイスショーなんて出たことが無かった私は、初めての団体でのスケーティング。
これが結構難しくて、周りの動きに合わせようとするとどうしてもワンテンポずれてしまう。
あーあ。
私って団体行動苦手だったんだ。
それもそうか。
学校でだって、真奈以外の子とはあまり話さないし一人でいるほうが楽。
球技大会だって、個人でできるからってテニスにしたけど、シングルは良かったのにダブルスになった途端グダグダだったもんな。
みんなは和気あいあいと動きの確認をしてる。
私は自分のあまりの出来なさにイライラして、その輪から抜けて一人で動きの確認をした。
スッキリとしない気持ちを抱えながらリンクを周回していると、隣に入ってきた人の影。
結弦「どうかした?」
優しく微笑みながら私の顔を覗き込んできた羽生くんは、私のペースに合わせて隣を滑る。
「みんなと合わせて滑れなくて……私、こういう、団体で演技ってやったこと無かったから」
結弦「へえ、意外。なんでもできるのかと思ってた」
「私のこと、何だと思ってるんですか(笑)」
結弦「4回転を2本も跳んじゃうからさ、スケートに関しては無敵なのかなって」
「私なんてまだまだです」
結弦「そんなこと無いよ」
「えっ、あ、ちょっと!」
羽生くんは私の手をとると、スーッとスピードを上げてリンクを回り始めた。
「あのっ」
結弦「大丈夫。感覚は掴めてるから。できるよ」
そう言うと、羽生くんはオープニングで使われる曲を口ずさみながら、的確に動きの指示を出していく。
あれ?不思議……
なんか、さっきよりできてる気がする。
結弦「どう?」
「なんか……出来そうな気がします」
結弦「じゃあ、一回俺と合わせてみよっか」
じゃあいくよ、と合図を出して、私と羽生くんは同時に滑り出す。
心のなかでカウントを取りながら、教えられた通りに動いてみる。
すごい……
隣にいる羽生くんと、ちゃんと動きがあってるのがわかる。
「すごい……出来た」
結弦「だから言ったでしょ?できるって」
「よかったあ……みんなの足引っ張ったらどうしようって思ってたから……っ」
なんだか安心しちゃって、思わずポロッと涙が出てきた。
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作者名:優里奈 | 作成日時:2021年4月13日 22時