14話【結弦side】《2011年全日本選手権 女子FS》 ページ15
昌磨と一緒に用意された席に座ると、最終グループの直前練習が始まるところだった。
リンクにいる6人の中に、黒と白の衣装を身に着けた加賀美さんを見つけた。
ほかのシニアの選手に引けを取らないくらい堂々としている。
結弦「昌磨、もっかい聞くけど、ほんとにあの子中2?」
昌磨「ほんとだって(笑)ゆづくん、なんでそんなに信じてくれないの」
結弦「だってさあ、あまりにも堂々としてて初出場だなんて思えないんだもん」
あんなに余裕そうに滑られると、ショートで固くなってた俺が情けなく思えてくる(笑)
昌磨「なんか、リンクの上で緊張することってほとんど無いらしいよ。昨日のショートでも、ジャンプ失敗したけどそれで開き直ったらうまくいった……的なこと言ってたし」
結弦「へぇー……」
そんな話をしているうちに、加賀美さんの演技の時間になった。
名前を呼ばれ、リンク中央に登場した加賀美さん。
曲が始まると、しなやかな動きでリンクを滑りだす。
全日本ジュニアと変わらない構成なら、このあと4回転トゥループはなず。
思ったとおり、ジャンプの助走に入った。
……
会場から大きな歓声と拍手が沸き起こる。
決めた……。
4回転トゥループ、着氷も完璧。
その後の演技も堂々としていて、見ていて自然と惹きつけられる。
そして演技の後半、俺ら会場にいる全員が、どよめきにも似た歓声をあげた。
結弦「4回転サルコウもできるの……」
なんと加賀美さんは、全日本ジュニアから1ヶ月足らずでサルコウまで仕上げてきた。
サルコウの着氷は乱れてしまったけど、回転は足りてるはず。
2つの4回転ジャンプを転ぶことなく、ノリノリで演技を終えた加賀美さん。
会場からの拍手が鳴り止まない。
結弦「なんか……すごいもの見たかも」
昌磨「うん……」
今日という日が、この先ずっと記憶に残るとんでもない日になる気がしてきた。
そして驚きはさらにーーーーーーー
会場のモニターに映し出された加賀美さんの得点は、110点超え。
暫定1位で、2位とは15点くらい差がついている。
会場からは再びどよめきが起こり、大きな拍手が送られた。
これには加賀美さん本人も驚いたようで、キスクラでコーチと抱き合って喜んでる。
立ち上がって、周りの客席に向かってありがとう、と頭を下げていた。
結弦「やばい、鳥肌立ってきた」
俺、この瞬間は絶対に忘れられないと思う。
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作者名:優里奈 | 作成日時:2021年4月13日 22時