【江戸川乱歩】何故か事務員の私が名探偵様に揶揄されている

潜入 ページ32

*


「Aさんと乱歩さんに依頼です。」


乱歩さんからおでこに接吻(キス)事件の翌日、ぐるぐると謎の気持ちが私の中に渦巻いているが、気付かないふりをしたまま仕事をしている。そんな私に国木田さんが乱歩さんと共に私に声を掛けた。


「え、依頼......事件ですか？」


私がそう云うと国木田さんは云いにくそうに声を詰まらせた。何なんだろう？ 事件じゃないのかな。


「乱歩さんとAさんにはある組織のアジトを突き止めて欲しくて。」


成程。......でも私要るの？ 何時もは乱歩さんが事件の調査に私を連れ出すが、私を含めてのちゃんとした依頼は初めてじゃないだろうか。


「ふーん。でもさ、何でAなの？」


私が疑問に思っていた事を乱歩さんが口に出す。


「其の組織の幹部は今度開かれるダンスパーティーに出席するそうです。そこで奴等に近づいてアジトを突き止めて下さい。実は其の組織は前に探偵社が捕まえ損ねており、殆どの......戦闘系の社員が顔が割れています。」


国木田さんはそう云い、一息置いて再び口を開いた。


「そこで顔が割れていない乱歩さんとAさんにダンスパーティーに潜入してほしいのです。」


「へぇ〜成程。楽しそうじゃん！ A、此依頼受けよう。」


うん。趣旨は理解出来た。でも、でも......国木田さんは何て云った？ ダンスパーティー......え。


「ダ、ダンスパーティー！？！？」

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