【江戸川乱歩】何故か事務員の私が名探偵様に揶揄されている

実践 ページ14

*


「乱歩さん、乱歩さん」


「ん？ 其の顔は、何か良い案を思いついたって顔だねぇ〜」


うっ、やっぱり乱歩さんは何でもお見通しだ。だが、昨日までの私とは違う。今に見てろ。今日からは、乱歩さんと私の立場は逆転。私は口を開いた。


「ら、ら、乱歩さん。きょ、今日もイケメ......ンですね......」


揶揄(からか)うつもりが、言ってるこっちが恥ずかしくなり、不覚にも顔が赤くなる。ぷっ、と乱歩さんが吹き出す音が聞こえた。


「アハハハハハ！！ A、ば、莫迦じゃないの！ ひぃぃ、お腹痛い......」


なっ......思いっきり笑われた上に罵倒された！？ 照れている様子全く無し。


「あのさぁ、A。揶揄うってのに、Aが赤くなっちゃってどうするの。......ぷっ、アハハ！！」


はああああ......失敗だぁ......報告書への道が更に遠くなった気がする。


「じゃあ、僕がお手本、見せてあげようか？」


と云い、乱歩さんはこちらへと詰め寄ってきた。......ん？ お手本って揶揄うことの......？


「え、はっ......？」


乱歩さんの顔が至近距離。そして乱歩さんの手は壁に。こ、これって、俗に言う"壁ドン"ってやつ！？
次の瞬間、乱歩さんが私の耳元で囁いた。




「A。好きだよ。」




「え、あ、う、はっ......！？」


私の脳内が混乱している。え、これって......え！？ ど、どんな揶揄い方っ......。物凄くあたふたとなり、色々ともう分からなくなってしまい、私は有り得ない行動に出てしまった。


バチーン、といい音が探偵社内に響き渡る。


やばい、終わった死んだ。

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