田中の樹君。3 (ページ1)

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田中side

美波先輩とは、中学の頃出会った。

一目惚れだった。

「田中って言うんだ？」

「はい。そうですけど？」

学校の屋上で授業をサボっていたら、遭遇した彼女は初対面の俺にグイグイ話しかけて来た。

「へぇー。私が好きな人と同じ名前」

何故か、とても惹かれた。

こんなに惹かれた人は初めてだった。

「先輩は、名前なんですか？」

「美波。美波春って言うんだ。」

そう、彼女は兄の恋人だった。

「樹～。紹介したい人がいるんだ。」

「春ちゃん。俺の恋人」

「樹、お姉さん欲しいって昔言ってただろ」

「３人で遊びにいかないか？」

「樹、お兄ちゃんを見習いなさい。」

「お兄ちゃんと全然違うじゃん」

「樹のお兄さんめちゃくちゃ好い人だな。」

「田中は、お兄さんに似てないな～」

「田中と言えば、兄の方だよな」

うるさい。

うるさい。うるさい。うるさい。

なんで、兄貴は俺の欲しい物を全部持っていくんだよ。

両親の愛も。

先輩も。

親友も。

「兄貴にはうんざりなんだよ。
いつもいつもいつも、良い兄貴演じやがって。
先輩の事も好きじゃない癖に」

「．．．．樹？」

「兄貴が居なければ俺は一番になれてたのにな」

こんなこと言いたくなかった。

ただの嫉妬だ。

俺は、最悪だ。