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1. 居所 ページ12

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「今日からここがスンミンくんのお家だよ。ごめんね、バンさんと住んでたお店より退屈だと思うんだけど…」


お店のある裏路地を通り、数分で着いた我が家。
私の声がけに問題ない、とでも言うように先に部屋に入り、室内を見渡す彼。仕事に行くためだけに借りた1Kの部屋が2人で暮らすとなると途端に狭く思えてくるのだから不思議だ。彼は気にとめていないようだが、睡眠だけはなるべく質を良くしたいと奮発したセミダブルサイズのベッドを置いている以外、ほとんど物のない無機質な部屋で退屈しない訳がなかった。


「何か欲しい物があったら遠慮なく言ってね。」


ほら、こんなにボロボロになるまで働くくらいだから貯蓄はそれなりにあるつもりだし、と自嘲しながら話すと、カーテンを開け窓の外を眺めていた彼が振り返り、不満げな顔をした。

何故そんな顔をしたのか、生憎皆目見当もつかなかったが、気に障ることを言ってしまったようで申し訳なくて、反射的にごめんね、と謝罪の言葉を口にした。だが、彼はその言葉に余計に気を悪くしたような顔をする。


「お、お風呂!スンミンくんは入ったんだよね?私、急いで入ってくるね!眠かったら寝てていいから!」


どう機嫌を取ってあげればいいのか分からず、終いには、浴室に逃げた自分が酷く情けなかった。子育てって毎日こうなんだろうなと世のお母さん達の偉大さと奮闘ぶりに感心しながら、私は彼と2人きりになってほどなくして完全に明るい未来が見えなくなっていた。

彼と暮らすことを投げ出したいとは言わないし決して手放したくないのだが、どうしたらいいのか分からない現状は変わらない。なんと言っても意思の疎通が難しいのだ。バンさんは彼の表情を見て考えていることを凡そ把握していたようだったが、会って高々数時間の私がそんなことを出来るわけもない。

悶々と考え込みながらシャワーで一日の疲れを流し、ふと別れ際のバンさんの言葉を思い出した。





___「何か分からないことがあったら気軽に連絡してね。口で一度に説明されてもすぐ熟すのが難しいのは当然なんだし。」


そういえば帰宅する前に店先で、スンミンのためにも遠慮しないで、と言われながらバンさんと連絡先を交換したんだった。

使わない手はない、と急いで全身くまなく洗い、素早く着替える。髪もろくに乾かしていない状態で脱衣所に持ち込んでいた携帯を手に取り、彼に電話をかけた。


︎ ︎

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作者名:not found | 作成日時:2024年3月15日 2時

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