#9 -four years ago- ページ9
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思い返せば、4年近く付き合ってきて、喧嘩という喧嘩はこれが初めてだった。
穏やかな優吾と付き合っていれば、よほどのことがない限り争いは起きない。
些細なことは私が今まで全部我慢してきた。それがいけなかったのかな。でももう知らない。
「…おはよ、優吾。」
「おはよう」
いつも休日は起きてこないのに。
今日に限って、ちゃんと起きてるんだね。
「A、あのさ、」
「優吾。話があるの。」
「…分かった。」
隈のひどい顔。
きっと私はそれも同じで、最後まで私達は、
「別れよう。」
「…」
「もう限界なんだと思う。だから、別れて」
「A、俺さ、」
「お願い、…楽にさせて。」
「……分かった。」
ずるい言い方してごめんね。
嫌なプライドでこの言葉は言えなかったけど、それでも幸せだったのも事実で。だから、ありがとうって思ってる。
「ごめん、ちょっと外の空気吸ってくる。」
「うん。」
ベランダに出た優吾は、しっかり窓を閉めて脱力したように柵にもたれた。
その後姿を見て、止まったはずの涙が溢れる。
好きなのに、大好きなのに、私は楽になることを選んでしまった。
優吾が話そうとしてくれたのにそれを遮って別れを告げたこと、この二日間でずるいくらい感情を出しすぎたこと、もっと色々方法はあったのに衝動的に別れを選んだこと、
私は4年たった今でも、悔やんでいる。
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作者名:飴宮 | 作成日時:2022年5月12日 18時