ノスタルジック (ページ36)

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「田中にね、言ってなかったことあるの。」

仕事を定時ぴったりで終えて、2人でいつもの洒落た飲み屋にきて、いつものメニューを頼んで会話も落ち着いた頃。

ずっと言ってなかったことを口にした。

「優吾とね、ちょうど一ヶ月前くらいに再会して。」

「…は？」

「それでまだ好きって言われて。」

「え、は？」

「それから、あと2ヶ月の間また振り向いてもらえるように頑張りたいって言われて。」

「…それで？」

「勢いで頷いて、もう1ヶ月経つ。」

はあああ、と大きなため息とともに、頭を抱える田中。

少し経って、チラッと睨むようにこっちに視線を向けてくる。

「お前さあ、なんですぐ言わないの」

「タイミングもあるし、忘れてたっていうのもある。」

「…まあ、それでいま幸せなら良いんじゃない。」

「え、急に優しい。」

「だってお前、最近妙に機嫌いいし、
　なんとなくなんかあったんだろうなとは思ってた。」

田中樹、できる男。

こんなにどうしようもない人間を、ちゃんと見てくれてるなんて。

「で？出かけたりしたの？」

「うん。基本は飲みだけど、水族館とキャンプに行った。」

「めっちゃデートじゃん。」

「まあね笑」

「うわ、リア充の余裕。」

「…そうでもないんだよ？」

「なに、相談聞けって？」

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