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会社が潰れていたとは知りもしなかったし、そういえば最近娘さん学校で見ないとも思ってはいたが
そういう事情があった事も初めて知った。
自分が虐められていたという事も、名前こそ上がってはいないが広まっているようだ。
これでは悲劇のヒロインの様で、変に心苦しい。
早めに退散しようと歩き出す。しかし聞き捨てならない言葉が、いや名前が飛び出てきた。
「それとさ、これはいまいちよく分かんないんだけど…UNDEADの朔間零がパワハラ受けてた子を守ってたらしい。」
「何それヤバ。やっぱ事務所所属だと共演関係とかで相談事とか引き受けるのかな？にしても、王子様みたいね…。」
「それなぁ。イケメンだわ…。」
もしこの場で私がお茶を飲んでいたならば、吹き出していたであろう。
何かを食べていれば喉に詰まらせて窒息死していたかもしれない。
少女は駆け足である場所へと走り出した。
それは言うまでもない音楽室である。
彼の待つ音楽室へ、ここ最近で恐らく一番体力を消耗する位に全力で階段を駆け上がり
時折転けそうになりながら向かった。
大きな音を出して扉を開けるつもりは無かったのだが、走ってきた勢いと早く彼を問い詰めたいという一心が重なった結果
さながらヒーローが登場するかの如く扉を開け放ってしまった。
『朔間さんっ！！！』
視線の先には変わらずカウチに横になる彼だが、少女が口にした呼び方が望む形ではないからか返事が返っては来ない。
少女も態々直そうとはせず、向こうがその気ならとやけになっていた。
しかし今はそんな事を気にしている余地はない、少女はつかつかと零のもとへ歩み寄り問いただした。
『佐伯さんのお父さんの会社が潰れたって聞きました、後、朔間さんパワハラを受けてた子を守ったとかいう噂が流れてます！どういうことですか！？』
決してパワハラを受けてた子、というのを自分に当て嵌めて考えている訳では無いけれど。
まさか、あれほど嫌っていた噂から情報を得る事になるとは思いもしなかった。
嫌っているからこそ、その噂を鵜呑みにするのはどうなのかという疑念が浮上してくるが、その件は後で自分と向き合うとして。
「今度は我輩の出番、か。」
随分落ち着いた様子で言うので此方も混乱する。
『この前聞いた時は知らないって言ってたじゃないですか、それならなんで朔間さんの噂が広まってるんですか？』
「まぁ嬢ちゃん、そう急くでない。取り敢えず座らんか。」
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作者名：黒凛蝶 | 作成日時：2022年6月14日 16時
