拾参 ページ14
Aside
誰…?
〔あら、お忘れかしら?まぁでも仕方ないわね、こうして話すことが出来たのは何十年ぶりですもの。〕
〔小さな倉庫の暗い一室で、お話したこと、私は覚えているわ。〕
倉庫、一室…?
〔そうよ、村外れの海の近くの。あの倉庫で〕
村外れ、海の近く…
《その時、脳裏にフラッシュバックした過去の記憶。》
『…─!』
悪縷─…?
〔ええ、思い出せたようで何よりだわ。さて、十年ぶりかしら?私にとっては短い期間な気もしたけど…貴女にとっては…〕
〔そうね、久しぶりと言っていいわね。本題よ、貴女にお願いがあるの。〕
お願い…?
〔そう、お願い。私にその身体を譲って?〕
何言って─…
〔私はずっと私の身体になれる人を探していたの。でも渡される子は何時も私の期待値を越えられなかった。〕
〔すぐダメになってしまうの。腕一本乗り移るだけで泣き喚いちゃって…。もう面倒臭いから切り捨てちゃったわ。〕
〔でも、貴女は違ったの。…ねぇ、気付いてる?今の貴女の腕はもう私の物だってこと。〕
《視線を自らの腕に向けると、水の波紋のような黒い印が刻まれ、意志とは反対に自分の首元に吸い寄せられる。》
〔抵抗してもダメよ、私が解かない限り貴女はそのまま。〕
〔ほら、もう私の思うがままなの。だから、身体を頂戴?〕
『…断る』
〔あらいいの?〕
〔もしかしたら、この腕で大切な人を傷付けることになるかもしれないのに。〕
《悪縷はほくそ笑みながら白蓮を追い詰める。》
《その言葉に白蓮は一瞬の動揺を見せた。》
〔私は貴女を手に入れるならどんな手段も厭わないわ。人を殺して、街全体を破壊しても、その結果貴女が手に入るなら何も後悔はないわ。〕
〔身体さえ手に入れば良いのよ、貴女の魂があった方がそれは最高だけど…でも、高望みはよくないって言いますでしょう?〕
〔私も長い間封印されて突然開放された呪力を取り戻すのにまだ時間が必要なの。今はまだ五分の一って所ね。それよりも前のことは私が不完全だったから覚えてないの。〕
〔貴女の伏黒恵君の事とか〕
『!!』
〔貴女が身体を私にくれないなら、あの子を私が─
『させない。』
〔あら随分強気じゃない?〕
『黒は傷付けさせない』
〔だから、こうするの。貴女が私に身体をくれたら、貴女の大切な人達を傷付けないと約束するわ。〕
〔くれたら、の話よ?ふふっ〕
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2020年11月22日 0時