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有岡「ちげーの?」





A「クラゲ!

  あの頃の裕太くんとの思い出……」





有岡「クラゲな」





急に思い出した“裕太くん”

思い出したというか、忘れよう忘れようって昨日からずっと思ってるやつ。




そんな私の表情を察した有岡。





有岡「もっと分かりやすいのがいいよな。

  それは、いったん外したら?」





そう言って、有岡の手が胸元に伸び、クラゲの形をしたフエルトの名札をつかまれた。




A「あ、縫い付けてあって取れない……

  明日は違うの持ってくし……」





完璧脳内が裕太くんでいっぱいになった。

色んな思い出が、次から次へと再生される。





有岡「あー、先生の胸、柔らかかったー」




A「え、ちょっと!」




有岡「せんせー!俺、これ見たい!」





A「あぁ、パン屋に五つのメロンパン…ね」





有岡「知らない」





A「あー、じゃあこれ、とんでったバナナ」





有岡「んー、手袋じゃなくていいや。

  絵本にして!」





A「面倒くさい、ガキだな!」






有岡「あ、ひでー!」






A「うるさい!

  これ、からすのパンやさん」






有岡「あ、これ、すげー前からあるよな」





A「お父さんが買ってきてくれたやつね。

  今の子たちにも人気なんだ」





有岡「ちょっと待って。

  ちょっと‥‥」






有岡はソファーに移動して、クッションをひじ掛けに乗せ、寝る体勢をとった。




有岡「お昼寝の時間だからいいんでしょ?」





A「まあ、いいけど。

  あ、今日、バイトは?」





有岡「今日、バイト入れるなって言われてっから」





A「あ、デート?

  起こした方がいい?」






有岡「電話で起こされると思うから、これだけ……」





ソファーの前のローテーブルにスマホを置いている。

まあ、忙しいんだよね、有岡も。

昨日、ちゃんとお布団で寝てないし、寝かしてあげないと。






絵本を読む前の導入の手遊びを、ニヤニヤしながら見ている。

あんなに嫌がったのに、堂々とやりだした自分にもビックリする。





有岡はすぐに目を細めて、すぐに寝てしまった。

パサパサとキレイなまつ毛が、あの頃と変わらない。

22歳にもなると、髭は濃くなるんだな。

ブランケットをかけて、ソファーから離れた。




ピアノの近くで、一人色んな練習を始めた。






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作者名:やまぱん | 作成日時:2019年5月12日 17時

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