11 押し入れの奥のスニーカー ページ11
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すごい勢いで階段を上がると、お母さんが「大丈夫？」なんて下から言っている。
押し入れを開け、手前の物をだして、奥の一番奥の、端っこの箱。
正確には、紙袋に入ってたから、その紙袋ごと出した。
確か、もらったのは高校生の時だったから、もう五年近くたっている。
劣化とかしてませんように！
恐る恐る箱を開けると、白のハイカットのスニーカーが出てきた。
なんとなく、白が黄ばんでるような気もする。
ハイカットは、保育実習には不向きだよなって思って。
穴があいたスニーカーの方がいいかな？
とりあえず履いてみようと思って、中からくしゃくしゃの紙を引きだした。
A「えっ…」
思わず声を出してしまった。
もらった当時は、履きもせずそのまましまっちゃったから、気がつかなかった。
右足のくしゃくしゃの紙と一緒に、小さな、名刺ぐらいの封筒が出てきた。
グニャッと曲がっていて、強引に詰め込まれたのが分かった。
な、何…
手紙？
有岡から？
宛名のない白い小さな封筒を、開けてみた。
ドキドキする。
あの頃の有岡の字だ。
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『Aへ
大好きです。
やっぱり付き合ってほしい。
メールも携帯もつながらなくなってて、
オレの連絡先も消されてるかもしれないので。
090-〇〇〇〇-〇〇〇〇
〇〇〇＠〇〇.〇〇.jp
返事待ってます。
大貴』
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これを渡された時に、別れたことを後悔してるみたいな事言われたよな。
あまりのショックに覚えている。
自分だって『大好きです』って書いてるじゃない。
まあ、高校生だからいいのか。
今日言ってた、返事が来ないラブレターってこれのこと？
出した事を、今も覚えてるんだ。
それを、なんで今日言ってくれなかったんだろう。
ふざけて言えたよね。
左足の紙も出し、ベッドに腰掛けて履いてみることにした。
A「ん？」
右足の先の方に、何かが入ってた。
手紙だけじゃないのか。
指を入れ取り出してみると、水色の小さな巾着だった。
その袋には、有名なブランドの文字が印刷されていて、一瞬開けるのを躊躇した。
バイトをしていたとか言ってたけど、高校生にしてはハイブランド過ぎる。
再び恐る恐るその中身を手のひらに出した。
ハートだ。
多分シルバーのチェーンに、ハートの形のペンダントヘッドがついてる。
多分と言ったのは、シルバーが黒ずんでいたから。
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年5月12日 17時
