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大貴の首元の香りを確認してから、ゆっくり体を離した。
後ろ髪を引かれる思い・・・もう何度目だろう。
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翌土曜日、大貴は早めに来て、退院の準備を手伝ってくれた。
私も久しぶりにワンピースを着た。
そして、悠ちゃんに真っ白なセレモニードレスを着せる。
有岡「なんだろ、これって合ってんの?」
A「多分・・・ふふっ、やだ、合ってるよ」
有岡「この帽子とか、女の子のじゃねえの?」
A「だって、美枝んちの男の子も着たって言ってたよ」
自分の事を言われてるなんて分からないから。
長めのドレスの中で、足をバタバタと動かしている。
結局は可愛くて、すぐに抱き上げる大貴。
三人で写真を撮ってもらって、ご挨拶をした。
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産科の病棟を出ると、普通に現実の世界で。
美枝から借りてるチャイルドシートは、キャリーにもなるので、その中で悠ちゃんは手をいっぱい動かしている。
A「重い?」
有岡「ううん、ここで待ってて。
お会計してから、車、回してくるから」
一度荷物だけ運んで、今は悠ちゃんを持ってくれて。
私は、傷の痛みを逃がすように歩くのみ。
うちの車が見えたので、ゆっくり立ち上がると、
頭を一度振って、大貴が入ってきた。
有岡「外、あちいぞ。
エアコンまだ効いてない」
A「大丈夫かな、悠ちゃん」
有岡「うん、行こ」
キャリーを持ち上げ、反対の手は私の手を握った。
久しぶりに感じる、モワンとした熱気。
八月も終わるというのに、ジリジリと夏の匂いが苦しくて。
すぐに汗ばんでくる。
有岡「Aは、乗って」
後部座席の反対側のドアに回る。
車寄せは、屋根がついてるから、悠ちゃんには直射日光が当たらなくてよかった。
キャリーからチャイルドシートとなり、手際よくシートベルトで固定している。
あまり見えてないはずなのに、車の天井をじっと見てる悠ちゃん。
A「悠ちゃん、ブウブ乗ったね」
有岡「よし、出来た」
額に汗をにじませ、ドアを閉めた。
運転席に座り、シートベルトをスルスルと引っ張りながら
有岡「大切な人、二人乗せるのって、緊張する」
ルームミラー越しに目が合った。
A「はい、タオル」
有岡「あ、ありがと。
緊張するけど、これはこれで幸せだなって」
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作者名:やまぱん | 作成日時:2018年5月14日 22時