第五十四章 ページ38
「...そう。なら止めない」
「そんな、夕奈ちゃんなんで止めないの!?」
「千鶴。けいちゃんが自分で強く望んで、その思いが揺らがないのであれば、止めることはできない」
「何でっ!?飲んだらあの人達みたくなっちゃうのに...!!」
「それも分かってて飲むって決めたのはけいちゃんでしょ」
「そうだけど...!!」
「気持ち、わかってあげて」
「っ...」
止めない私に千鶴は案の定食いついてくる
私だって、出来るなら飲まないでほしい
結末を知ってるから余計に
でも、けいちゃんはそんなの望まない
腕が動かなくて、剣も握れず戦うことのできない自分を責めて、もどかしくて、そんな自分が戦う道を選んだ新選組に何故いるのか
その意味を見失ってる
だったら、どんな形であれその意味をもう一度見出せるのなら、望むままにしてあげたい
千鶴は唇を噛み締めて少し俯いた
そんな千鶴の頭を優しく撫でながら、再びけいちゃんに向かって口を開く
「ただ一つわかってほしいのは、けいちゃんは新選組にとって、みんなにとっていなきゃならない人。用済みなわけない。言ったよね?私の前で私の好きな人のこと悪く言うなって。もう忘れた?」
「...しかし、私は...」
「けいちゃん!」
千鶴の頭を撫でていた手を止めて離れ、食い下がるけいちゃんとの距離を詰め、彼の両頬を手で覆い無理矢理目線を合わさせる
「くどい、何度も言わせんな。けいちゃんがいないと、新選組は成り立たないんだよ。誰か一人でもかけたら、それはもう新選組であって新選組じゃないんだよ。自分は用済みとか、必要ないとか、そんな事言うな!わかった!?」
「ーーー貴女は本当にわからない人ですね....」
「そ?わかろうとしなきゃ、わかんないもんだよ」
小さく笑ってくれたけいちゃんにほんの少し安堵しながら手を離す
そして、けいちゃんが手にしていたびいどろを見て私は頷き、千鶴を背に庇いながら彼から少し離れる
どうなるのか知っているため、私は刀に手を掛けた
それを確認したけいちゃんは、びいどろの蓋を開けて一気に変若水を口に流し込んだ
第五十四章
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(本音を言えば飲んで欲しくない...でも、けいちゃんを見てたら止める事なんてできない)
(桐生君。貴女は不思議な方ですね。貴女のくれる言葉は、私の中に広く染み渡ります)
(夕奈ちゃん...私にはよくわからないよ....だって、あんなことになっちゃうのに...)
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ぷー(プロフ) - 神崎舞様。気付かず申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。早急に直させていただきます。また何か気付いた点などがございましたら、仰って頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2017年8月18日 11時) (レス) id: 557e5927c8 (このIDを非表示/違反報告)
神崎舞(プロフ) - 名前変換されないで夕奈のままになってる話が何話かあるのですが? (2017年8月18日 9時) (レス) id: 348d6ee4b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷー | 作成日時:2017年8月17日 11時