原田side ページ26
土方さんがあいつの名前を始めて口にした時、その事が嬉しかったのか、夕奈はふわりと満面の笑みを浮かべていた
ここに来てからの初めて目にする笑顔
それが俺にではなく、土方さんに向けられている
その事に胸がズキリと痛む
この感情が何なのか、嫌という程思い知らされる
俺は、夕奈に惹かれてる
こりゃ参ったな、なんて思わず苦笑を浮かべてしまう
土方さんは夕奈の表情を見て少し驚いた顔をするも、力強い返事を聞いて満足そうに小さく微笑む
今二人は見つめ合っているわけだが、そんなちょっとした事でも妬いちまう
そんな自分に驚いた
そして今まで静かだった周りの奴等が一斉に騒ぎ出せば、急だったからか、あいつの細い肩はビクッと跳ねた
そんな仕草でさえ愛しさが込み上げてくる
「桐生くん。男所帯でむさ苦しいところだが、これから宜しく頼む!」
「はい。此方こそ宜しくお願い致します」
近藤さんの優しい笑顔を見て少し安心したのか、夕奈も挨拶をする
少しして山南さんが夕奈を見ながら言った
「桐生くん。貴女は未来から来たと仰っていました。ならば、私達の事はわかりますね?」
優しく微笑んではいるが、眼鏡の奥にある目は鋭く光っている
だが、夕奈は山南さんの言葉から何かを察したのか頷き、体ごと右を向いて彼奴らの顔を見ながら順番に名を言っていく
そしてーーー
「十番組組長 原田 左之助さん」
自分の名が呼ばれればドクリと心臓が大きく脈を打つ
女には困った事はないと自覚している
だが、そんな俺がここまでになるとは、と誰にも気付かれないように小さく息を吐く
ふと、山南さんが先ほど言っていた事を思い出せば、自然と鋭く睨みつけてしまい
そんな俺に気付いたのか、あの人は物ともせず微笑む
くそ、何を考えてやがる山南さん!
俺と山南さんが火花を散らし合っていれば、声が聞こえ山南さんから視線をそらす
「土方さん。私男装した方がいいですか?」
「.....いや、無理だろ。てめぇが男装したら一発でバレちまうだろうよ」
「....え?何でですか?」
何故かと聞いている相手に向かって、土方さんの代わりに答えた
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作者名:ぷー | 作成日時:2017年8月11日 20時