第五章 ページ16
「話した理由は一つです。信じてもらえなくてもいい、ただ知っていてほしかったんです...私が少しでもこの世で生きていたと。私は私のいた未来で一度死にました。その時の感覚は今でも鮮明に覚えています。未来で死んだ私の事を知っている人は沢山いました。けど、この時代では私を知っている人は、私しかいません。もし今私が死んでも、誰も気にも止めません。いなくなった事さえ気づきません。そんなの、悲しいじゃないですか。私が少しでも此処にいた、という証が欲しいんです。その為には、知ってもらうしかない」
一旦話を区切り息を吐いて再び吸えば、続きを話し
「私が話さなければ、私の事を知る人はいない状態で死ぬとろこでした。ですが、話した事で私を知ってもらってから死ぬことができます。本当に一人で死ぬのと、誰か一人にでも知られて死ぬのとでは、私にとっては大きく違います。だから、お話ししました」
話し終えてからも彼から目を逸らす事はせず、そのままの状態を保ち
すると黙っていた土方さんは口を開いて言った
「てめぇの処遇はこれから話し合って決める。てめぇと雪村は部屋に戻ってろ。斎藤」
「御意」
私と千鶴を部屋に戻すため命じられたはじめくんが席を立ち、視線で行くぞと言われれば大人しく立ち上がり
部屋を出る際、私は立ち止まればはじめくんが何をしているという顔で見てくるも、今回はごめん無視します
クルリと方向転換し部屋の中を見れば、土方さんも何をしているという顔で私を見る
でも、そんな事気にせず入り口で正座をすればみんなの顔を一度見渡してから、スゥッと息を吸い込み口を開く
「話を聞いていただき、ありがとうございました」
感謝を述べてから未だに縛られている手を床につき、頭を深く下げてお礼を言う
少しして頭を上げ立ち上がり、「失礼致しました」と面接のように言ってからスッと静かに障子を閉め、昨夜いた部屋へと戻った
第五章
￣￣￣
(やべぇ、やっちまった)
(あいつの覚悟は本物だった)
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作者名：ぷー | 作成日時：2017年8月11日 20時
