連れて逃げてしまおうか ページ29
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…睡眠だって取ってないはず。
今晩も寝るつもりないでしょう、
『本当に…高専に戻らなくてもいいんですか』
私も心配して言ったが…
「問題ねぇよ、桃鉄99年やった時の方がしんどかったわ
それに…オマエも、Aもいる」
傑くんの肩にポン、と手を置いた後頭を撫でられそう言われた。
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その後もただ、沖縄観光をしただけだった。
私は初めて食べた物、初めて見た物、初めて行った場所ばかりで…全てが初めてだった。
「見ろA!ジンベイザメじゃ!」
理子ちゃんにはとても懐かれた。
現に今も手を繋いで水族館を回っている。
『…大きい水槽…』
水族館なんて…初めて…
『すごい…』
思わず言葉が漏れてしまった。
「…」
無意識なのか、ふと、理子ちゃんに繋がれた手に力が入った。
理子ちゃんを見れば、その目はどこか…
寂しそうな、悲しそうな…まだ子供のような…
『…』
…あと…数時間後に彼女は天元様と同化する。
…それは彼女にとっていい事なのか、私には分からない。
それでも…
『…理子ちゃん』
「…なんじゃ?」
彼女と向き合い、
『私が…貴方を連れてどこかへ行っちゃいましょうか?』
と言った。
「…え?」
『…貴方の安全は私が保証するわ。
傑くん達も…納得してくれるはずよ』
彼女の目を見て、そう言う。
主人の命令には逆らって私がどうなるかは分からない
それでも…
…この子は…まだ子供で…私と同じように知らないことが…
この世界にはまだ沢山あるの
それを知って欲しい。
私のように…何も知らないまま大きくなって欲しくないの
何より、黒井さんと離れ離れになんて…させれない
この子にとって黒井さんは家族同然だから。
大切な人なのだから。
『同化してしまったら…もう、皆と会えなくなるのよ』
「…へ、平気じゃ、妾は…寂しくも、悲しくもな_____」
『1人になってから…気づいたって、遅いの』
「っ…」
かつての私がそうだったから、同じ道を辿らないよう
せめて彼女を正しい道へ
『私は高専の地下…天元様のいる本殿まで行けません
ですが、悟くんと傑くんがそこまで送ってくれます。』
ぎゅっと、彼女を抱き締める。
『2人は…私と同じ事を言うと思うから…
その時までに貴方の気持ちを固めておくのよ?』
「ッ…ぅん、…」
小さな嗚咽と共に、返事が聞こえた。
『……』
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ゆい(プロフ) - 出来れば呪術廻戦0を期待します (2023年1月2日 19時) (レス) id: da308acd1e (このIDを非表示/違反報告)
Mami(プロフ) - 凄く話が良いです! (2022年12月20日 0時) (レス) @page42 id: a64b7436ba (このIDを非表示/違反報告)
瑠歌 - 初コメ失礼します!ずっと言いたかったんですけど、お話すごい面白いです!更新がんばってください! (2022年12月15日 7時) (レス) @page22 id: 4793296ced (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒姫ユキナ | 作成日時:2022年12月7日 16時