好きだなんて 【宮侑】

5 苦手 ページ5

｢えっ、でもこれ先生に出さなきゃ｣

｢ええって後でも｣





やばい気がする。

多分、この場のペースは宮くんにある。

両手に抱えていた資料は、

宮くんに軽々と持たれて机に置かれた。





｢ええやんええやん、交流深めよ｣





椅子を引いて宮くんは座り、

立ち尽くしている私に愛嬌のある笑顔を向けた。

なんだかこの笑顔は愛嬌だけではなくて、

無言の圧力を感じる。

私は机を挟んで、大人しく宮くんの正面に座った。





｢Aちゃんて、俺のこと苦手やったんやな｣





オブラートに包むこともなく、

どストレートに聞いてくるあたり。

やっぱり宮くんは恐ろしい。





｢に、苦手っていうか｣

｢じゃあ好き？｣

｢好きじゃないけど｣

｢じゃあ苦手なんや｣





なんとも極端な考えだ。

いや、私が本人のいる前で苦手って言ったのは

事実だし私が悪いと思っている。





｢俺のこと苦手？｣

｢秘密｣

｢えー、さっき苦手って言うてたやん｣

｢宮くんの聞き間違いかも｣

｢逃げたな？｣

｢さあ、なんのことやら｣





そういえば、今に至るまで

純粋な疑問があった。





｢なんで宮くんは 、私とそんな話したいの？｣

｢楽しいから｣

｢ほんとに？｣

｢ほんまやって｣





頬杖を付きながら私のことを見ている宮くんは、

外の夕日に照らされていた。

なんとなく、高校生らしからぬ色気を出していて

私は目を背けたくなった。





｢照れてる？｣

｢なんで？｣

｢顔赤い｣

｢ゆ、夕日のせい｣

｢ふっふ｣





確かに近くで見れば見るほど宮くんはかっこいい。

スマートでモテて、運動も出来て。

こんな自分が恥ずかしくなるぐらいに、

彼は完璧なのだ。





｢宮くん、別れたってほんと？｣

｢おー｣

｢なんで？｣

｢束縛激しいねん｣

｢束縛は嫌いなの？｣

｢限度がある｣





宮くんにも苦手な女の子とか居るんだ。





｢好みの子っているの？｣

｢俺に苦手意識持ってない子｣

｢根に持ってる？｣

｢ふっふ、自分苦手やって言うたん？｣

｢秘密｣





2人で静かに笑っていると、

宮くんはおもむろにスマホを取り出した。





｢LINUやってる？｣

｢うん｣

｢交換しよ｣

｢いいよ｣





特に断る理由もないため、

私と宮くんはお互いに連絡先を交換した。





｢アイコンがウーパールーパーってまじか｣

｢可愛いじゃない！ウーパールーパー！｣





この日から、苦手な宮くんとの

奇妙な交流が始まった。

6 苦手→←4 苦手

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す