罪で結ぶ絆 2

心の襞 ページ9

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「裕太……」

「……お客がシャワー浴びてる時にさ
　タオルでずっと掌を押さえていたら、
　急に震えがきちゃって……俺、待つ
　ように言われてたんだけど……急い
　で服着て部屋を飛び出しちゃったん
　だよ」



　裕太はその時のことを思い出したのか
自分の身体を抱きしめるように丸まり、
震えだした。




「裕太っ。ねえっ、大丈夫だからっ」

「ミツっ、ミツ……ミツ……」


　裕太が助けを求めるように、ひろの名
前を呼び続けるから、どうしていいかわ
からなくて、裕太に寄り添い背中をさす
った。



「裕太……一緒にいるから、だから大
　丈夫だよ」

「玲さん」



　顔を上げ、私を見つめる裕太の眸はど
こか虚ろで不安気で、とても今から帰る
なんて言えなかったんだ。









　その夜は、シングルベッドに二人でく
っついて眠った。


　浅い眠りだった。もし深く眠ってしま
ったら裕太が消えてしまいそうで、彼か
ら離れないようにずっと寄り添っていた。





朝方の、白み始めた部屋の中


　そっと裕太のスウェットを捲ってみる
と、脇腹やお腹には、刃物でついた赤い
傷がついていた。




「……」


裕太、頑張ったね……





　それは小さくて浅いものばかりだった
けれど、裕太の心の傷はきっと深くて大
きいだろう。

　時々震える長い睫毛、白い肌、唇から
顎にかけての綺麗なライン。まだこんな
若い男の子が……そんな彼の寝顔を見て
いたら

どうしようもなく哀しくて、哀しくて。

　まるで心の襞を、直接触られているか
のように胸の奥が痛かった。






＊





　あれから寝てしまったみたい。目を開
ければコーヒーの良い香りが漂っていた。

　薄いカーテン越しに陽光は入ってこな
いけれど、夜が明けたことがわかる。

　起き上がると、テーブルの上にはコン
ビニの袋に入った、サンドウィッチやお
にぎりが置いてあった。




「おはよ」

「おはよう」

「玲さん、良く眠れなかったでしょ？」



　裕太は申し訳なさそうに、けれどよく
眠れたのか、やっと笑顔を見せてくれた。



「うん、でも大丈夫。今日は午後から仕
　事だから」



時計を見れば九時だった。
六時間以上は寝られたはずだ。




「お腹空いたんじゃない？適当に買って
　きたから食べよ」

「うん、ありがとう」



　サンドウィッチを頬張りながら裕太が
淹れてくれたコーヒーを啜る。








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