罪で結ぶ絆 2

カタルシス ki ページ30

・






「酷いよ……」


玉は驚いた表情をして俺を見ていたが、
徐々に顔が歪んでいった。


「ああ、酷い話だと思うわ」

「ミツは何も悪くないのに」



「それは……、どうかな……」

「え？」




愛情というものに恵まれなかった俺にと
って、隣に住む可愛らしい姉妹は癒しで
あり心の支えだった。

彼女たちにとっては、俺はよく遊んだ只
の隣人だったのかもしれない。

けれど、孤独だった俺には――

大袈裟かもしれないが、絶望的な毎日の
中で、二人は俺の生きる意味だったんだ。
俺の全てだった……。

彼女達がいたから、義父からの虐待にも
耐えることができた。

明日には、またあの優しい姉妹に会える
と思うと、それだけで俺は歯を食いしば
った。

学校から帰ると、庭に出てAが通る
のをいつもいつも待っていた。




「お母さんは？」

「母親は百合が死んでから病んでさ、家
にこもりがちになったよ」




そりゃそうだ。自分が男と会っている間
に百合が家を抜け出して、用水路で溺死
したんだ……頭もおかしくなるわ。



「何年も無気力だったよ……ヒヨリのお
父さんとは、あれからもう会ってなかっ
たと思う」



ケロイド体質だったのか、俺の背中の傷
は大きいケロイドとなり痕が残った。





雪が溶けると、Aの父親が良くブナ
の森に連れて行ってくれたっけ。川遊び
にも連れて行ってもらった。



“みっくん、背中どうしたの？”

“只の怪我”

“痛い？……大丈夫？”



そう言い、俺の傷を優しく撫でてくれた
Aの手の温もりは、その時彼女が着
ていた水着の向日葵の柄と共に、今でも
思い出すことが出来る。

温かくて、優しくて……
傷が浄化されていくようだった。





「でも、ヒヨリのお父さんへの憎しみは
なかったの？だって、お母さんの相手で
しょ」

「不思議となかったんだよね。俺にはい
つも優しくしてくれてさ、背中の傷も見
てると思う……頑張れ、負けるなって……
いつも励ましてくれてたよ」


Aの父親は、俺にとても良くして
くれた。俺に対しての負い目があった
のかもしれない。








そして…………

俺は遠い記憶を手繰り寄せた。








あの火事が起きたのは俺が三年生の冬。








「玉、やっぱり聞かない方が良くないか
？……知らない方がいいこともある」

「ミツ？」



「てか……話すことできるかな、俺……」




「大丈夫……話して」




玉の温もりがそっと俺の手に重なった。







・

紅蓮 ki→←傷 ki

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す