罪で結ぶ絆 2

過ぎし日の想い ページ14

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　訊けばさらっと返された。そうよね、
ひろがモテないわけはないもの。



――まさかそれがヒヨリ？



　ふと思ったものの、次の言葉でそれは
違うのだとわかった。






「俺がまだ、この仕事をし始めたばかり
　の頃だから、もう随分前のことだよ」

「付き合ったの？」

「ああ。だけど、二週間もしないで振ら
　れたよ……私には耐えられないって。
　俺も別に好きでもなかったし、ああそ
　うって感じだった」





　表向きの顔である“ルキア”には、
若い女性のお客さんもかなり来る。

　オーナーの黒川さんが連れて来た男の
子達だ。もちろん容姿はカッコ良いが、
どの子も皆魅力的だった。

　とても居心地の良い店だっていうのも
あるけれど、そんな彼ら目的で店に通う
女性もたくさんいると思う。




「でも私はっ、」

「玲さん、俺のこと何も知らないだろ？」




続けようとした言葉を遮られた。




「知ってるよ……」

「いったい何を？俺は、玲さんに好きに
　なってもらえるような男じゃないよ。

　お客に見せる顔は本当の俺じゃないし
　まだ良く知らないのに、付き合おうっ
　て言われても付き合えない」





「今日のひろは？」

「え……？」




「今日、こうして私と会って、私の作っ
　たお弁当を美味しいってたくさん食べ
　てくれて、手を繋いで眠ったひろもっ
　……本当のひろじゃないの？」



私を見つめ、ハッと息を吞んだ。


「それは……」







「もしかして……好きな子いるの？」

「え？」

「今でも……過去でも……もちろんいた
　でしょ？」



　私の問いかけに眸が僅かに揺れたけれ
ど、言葉を選ぶようにゆっくりと話しだ
した。



「俺…、ずっとこんな仕事してただろ？
　だからそんな機会もなかったし。でも
　遠い昔なら……今でも忘れられない子
　はいるよ」




忘れられない子？




「その子は？」

「初恋だって。小さい頃のこと」




　そう言い、昔を懐かしむように遠くを
見つめる。

　葉の隙間から、ほろほろと零れる陽光
が、ひろの身体に斑模様を落としていた。







「ひろは、仕事を辞めようと思ったこと
　はない？」

「ねぇーな」

「お金のため？」





「……まぁ。俺はオーナーに、デカい
　借りがあるんだよ」

「黒川さんに？」

「そう。あの人には本当に世話になった
　んだ。今はまだ……辞めらんないか
　な」




黒川さんか……

日に焼けた感じの良い笑顔が浮かんだ。







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