背中 ページ26
・
「言っておきたいこと？」
「そう……」
ひろはフッと口角を上げて笑うと、私に
背を向け、ゆっくりとシャツを脱ぎ捨て
た。
え……？
ひろの急な行動に、心構えができてない
ままシャツがパサリと床に落ちる。
……！
刹那、その背中から目が離せなかった……
目の前には――――
重い十字架を背負う
ひろの姿があったから……
以前働いていた店の黒服から、腕の『ス
カリフィケーション』を見せてもらった
ことがある。
『スカリフィケーション』とは、刃物を
用いて皮膚を傷つけることによって、人
体に模様をつける行為だ。
それは、西アフリカの民族の間で行われ
ているアイデンティティを示す風習だと
教えてくれた。
刺青とはまた違う、ケロイド状に盛り上
がる皮膚で形作られた文様は、民族的で
とても美しかった。
“でもね、これ、凄く痛いんですよ”
だから彼は、反対の腕にもやりたいけれ
ど、あまりの痛さに迷ってるって苦笑い
していたっけ。
「……っ」
ひろの背中の十字には、緻密で美しい模
様が描かれており
見た瞬間、思わず息を呑んだ……
そして身体中に散らばる沢山の傷痕………
それはまだ赤く、おそらく新しい。
“ ミツが助けてくれてる”
“ 俺の代わりに相手してくれてるんだ”
裕太の言葉が脳裏に浮かんだ。
そしてもうひとつ……
今、ひろが首から下げている、シンプル
なシルバーのプレートネックレスと同じ
物を、ヒヨリがいつも身につけていたこ
とを思い出した。
“あれ？それ、買ったの？”
“ううん、貰ったの”
“素敵だね、何か彫ってあるの？”
“え？うん……私のお守りなんだ”
高校生だし彼氏がいてもおかしくない。
その時は、恋人とお揃い？なんて訊かな
かったけれど
嬉しそうにネックレスに触れた彼女は、
とても穏やかで柔らかい表情をしていた
っけ。
そういえばあれはどこにいったの？
携帯もそのネックレスも、ヒヨリの部屋
から見つかってはいない……
ドッ、ドッ、ドッ
と、心臓が全身に血液を送り出し
“苦しい”
“助けて”
ヒヨリの言葉が頭の中で谺する。
こめかみがズキズキと痛み、目がぐるり
と廻った。
私の様子がおかしいことに気づいたんだ
ろう。ひろはゆっくりとこちらに近づい
てきた。
そして私の前まで来ると、首を傾げ射抜
くように私を見つめた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1589人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
siori(プロフ) - れいさん» れいさん、初めまして。フラグの部屋は、R18指定があるので設定が必要な為コミュに登録していないと見られないのです。サイトのルールなので申し訳ないのですが年齢が大丈夫であれば登録すれば読むことは出来ます……。 (2019年9月22日 21時) (
レス) id: 25b2988e99 (このIDを非表示/違反報告)
れい - ※の続きが読みたいです。もし宜しければ見方を教えていただきたいです (2019年9月22日 11時) (レス) id: 1d3b0a592d (このIDを非表示/違反報告)
永瀬なつ(プロフ) - ※の続きの見た方が知りたいです(´･ｪ･`) (2018年12月25日 22時) (レス) id: 579642299a (このIDを非表示/違反報告)
キラみつ(プロフ) - ※の続きの見方教えて頂きたいです！！ (2018年10月18日 19時) (レス) id: 4ba300fb0f (このIDを非表示/違反報告)
m228evanescent8(プロフ) - とても引き込まれる内容で楽しく読ませて頂いてます。※の続きの見方おしえてください！ (2018年10月18日 9時) (レス) id: 834a07e579 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：siori
| 作成日時：2018年8月17日 12時
