罪で結ぶ絆

本当の彼 ページ25

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夜空にまあるく切り取られた月と


輝くネオン、交差点を取り囲むように設
置されている大型ビジョンの極彩色……


渋谷駅前のスクランブル交差点は、夜に
なると華やかな雰囲気にがらりと変わる。


土曜の夜のハチ公前広場には、大学生だ
ろうか？これから渋谷の街へ繰り出す若
者で溢れ、独特の高揚感に包まれていた。


私とは違う、明るい世界の人達……


少しの切なさを感じ、そんな彼らを尻目
に見ながら、私は待ち合わせ場所のホテ
ルへと急いだ。









「上月様、ご指名ありがとうございます」


そう言い、ひろは丁寧に頭を下げた。



既にひろとも親しくなってはいたが、裕
太よりもどこか距離を感じる。

とはいえ、彼らは接客のプロだ。私のこ
とを男を買う女だと心の中では軽蔑して
いるのかもしれないが

私が会員になったからといって、店でも
態度を変えることはなく、常に居心地よ
く居られるように接してくれていた。




特にひろは……きっと、仕事とプライベー
トの切り替えが難なくできる人なんだろ
う。

店でのひろの印象は、親しみやすく程よ
いチャラさを持った、可愛い男の子とい
った感じだった。


けれど、時折見せるどこか暗い瞳……


その何を考えているかわからない横顔に、
私は気が付いていた。






私が指名しても彼には裕太のような動揺
はなく、いつもの親しみやすくチャラい
雰囲気とは違い――

今日のひろは、どこか退廃的で物憂げな
空気を纏っていた。




「お店の外で会うのって、何か新鮮な感
じがするね」

「まぁ……そうですね、何か飲みます？」

「あ、今はいらないかな……ひろが飲みた
ければどうぞ」





「僕は大丈夫です」

「そう」



自分のコートをハンガーに掛けると、ひ
ろは首を傾げて私をじっと見つめた。




「どうしてほしいですか？」

「え？」

「例えば、乱暴にしてほしいとか、Ｓっ
気出してほしいとかですよ」




「いつものひろがいいよ……」

「いつもの僕ですか？」

「うん……お店にいる時のひろがいいの」

「わかりました。でも……あれは本当の僕
じゃないですけど？」


そう言い、ひろは目尻に皺を寄せた。




「じゃあ……本当のひろを見せて……」


「本当の僕？」

「そう」

「わかりました」


「それと、敬語はやめない？」

「はい」


「ひろ、先にお風呂入って」




「あぁ……でもその前に、玲さんに言って
おきたいことがあるんだ……」






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