ＪＥＷＥＬ

自虐ネタ ページ17

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　次の日、明るい光で目覚めるとすでに
お昼を過ぎていた。窓から入る光の中を
部屋の埃が粉雪のように浮遊しているの
が見える。

　編集者を辞め、会社というところに行
かなくなるとどうしても時間にルーズに
なってしまう。

　だらしない毎日を送るのも、送らない
のも自分の心がけ一つ。昨日は引っ越し
があったから仕方がなかったとはいえ、
反省しないといけない。





「起きよ……」



　まだうまく動かない頭のままとりあえ
ずシャワーを浴びる。

　熱いお湯をぼーっと浴びていると、だ
んだん目が覚めてきた。









　遅い昼ごはんを食べ、私はとりあえず
執筆することにした。昨日散々考えて、
やっぱり最初は”ホルモンと私”の話から
書こうと決めた。


　『ＮＡＮＡＣＯ』の締め切りは来月だ
けど早めに取りかかりたい。



――おひとり様焼肉常連の、女子力ゼロ
のアラサー女性ライターが、肉の部位に
ついて熱く語りながらストイックに焼肉
道を突き詰めるのはどうだろう？

　自虐ネタをぶっこみながら面白可笑し
いエッセイにしようと思っていた。




　太輔はおしゃれな店も探せって言って
たっけ？気が重い〜。まずはその店に着
ていく服から買わないといけない私。

　いやいや、ドレスコードがあるわけじ
ゃないから別に自分が良ければいいか…
…とはいえ、いくら何でも昨日の恰好で
は行かれない。




エッセイの題名は、ずばり”焼肉道”

どうかな……？



　ちょっと太輔に相談してみよう、太輔
にラインをするとすぐに返事が返ってき
た。





＞いいアイデアだね、追加で彼氏なしも
　入れてよ

＞えーっ、何でよ？それいる？

＞女性の読者が多いから、その方が共感
　されやすいんだって

＞はいはいはい、他人の不幸は蜜の味的
　なことですね。私は別にいいよ。

＞あ、本当は嫌なんだろ？見栄はっちゃ
　って！
　
＞いーえ！気にしてませんから！

＞わかりやすいんだよなAって




＞太輔きらい





ふんっ！


　私はスマホをテーブルに伏せた、電話
がかかってきたけど無視してやるぅ。





カタカタカタ


「ええと、彼氏ナシね」


　とは言いながらも、きちんと太輔の言
うように文章を書き足した。






　開いた窓からは、心地よい春風がふわ
りと滑り込むように入ってくる。



　暫く夢中で書いていると、だいぶ時間
が経っていることに気づいた。


　もうこんな時間……、一休みしてコー
ヒーでも飲もうか。






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