銃口が捕える重い前髪かき分けて【伊i沢i拓i司】

十九発目 ページ22

Aside
もうすぐ東大王の収録を撮る日が来るなと、思っていたら、水上からメールが来た。
収録が久しぶりだよね、とか、久しぶりだから緊張するでしょ？とかそういう空気じゃなかった。

『東大王メンバーで話がしたい』

いつもなら少しの冗談も混じえながらメールの文章をだが、今回は少し違った。
少し怖くなって医療関係のことを調べると、12月に研修医員になるための国家試験があることを知った。

｢わかった、テレビスタジオの近くのいつもの所で｣

私はいつも余裕があるときや、収録後によることの多い飲食店を待ち合わせと提案し、今から2時間後に集合することにした。
心に少し小さな穴が空いた気がした。
それは王の退位の時と同じような喪失感で、次は王子も退位するのだと思うと、私と天才に東大王という王冠を譲られたような気分で。

そう、私たちは学生。
その向こうにある将来のために、将来の選択肢を増やすために高い大学に入学した。
入学したのは夢を叶えるため、夢を叶えるためには離れたくないことでも辞めなければ次に進めないことがある。

それが今来ただけなのに、それが2人になっただけなのに。
どうしてこんなに辛いんだろうか。

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