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*続 ページ23

剣先で男の顔をあげる。すると、彼は一瞬怯えてから安堵したように笑った。その顔が汚ならしく、先ほどまでは王座でふんぞり返っていたこの男が、一騎士に媚びへつらう姿が気にくわなかった。こんなやつに妹が殺されたのかと思うと、自分自身を飲み込んでしまいそうな憎悪と怒りが込み上げてくる。
今すぐにこの男を切り刻んでやりたい。……だが、それではAの痛みになど到底届かないだろう。

A以上に苦しめ。泣け。なんの力も持たぬ己を恨みながら、俺を恨みながら、じっくりと時間をかけて生き絶えろ。自分が奪った命の重さをその身で味わうがいい。

歯をくいしばって斬りかかりたい衝動を抑えていれば、何を思ったのか、その男は逆上したように言葉を紡ぎだした。

「俺が何をしたという!?お前は騎士だろう!働いた分の金は与えた、お前は十分な生活を送れ―――」

全て言い切らぬ間に、男の喉を切り裂いた。声にならない叫びをあげながら血を吐き出している。
何が、十分な生活を送れただ?
許してくれだと?
ふざけるのも大概にしてほしい。お前は、小さな祈りすらも踏み潰してきたんじゃないか。ただそれだけのために頑張ってきた。それを、お前は虫けら同然に葬り去ったんだ。

――――たったひとりの妹の幸せを願うことすら許してくれやしないのだから。

まだ生きている王。……思ったよりもしぶといようだ。
痛め付けるだけでは足りない。
きっとこの国全てを潰してしまえば、彼は絶望の淵に落とされながらみっともなく泣きわめきながら死ぬだろう。今でも十分醜いが、それ以上に汚く死に行くがいい。
男を窓に持っていき、髪の毛をつかんで外を眺めさせた。

「目をそらすなよ」

かち、と手元のスイッチを押す。すると、大砲の導火線に火がつき、城下は炎の海となり果てた。
その様子を見た男は、頭をかきむしりながら瞳孔を見開き、歯をカチカチと鳴らしている。

「許さないからな。地獄でも追いかけて殺してやる」

捨て台詞に近いものを吐き捨てて、城下へと降りた。人々の怒号や泣き声、逃げ惑う姿が映るが、そんなものどうだっていい。
そんなものは、Aを亡くした時点で価値などないのだから。



Aがいない世界の正義なんて、壊れてしまえ。








没 理由
心無い彼と憎悪が上手く表現できなかったため没に。
誰かの“正義”は誰かの“悪”というテーマです。
正義って一体、なんなのでしょうね。難しい。

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妄りんご(プロフ) - 兎危@緑君は天使です。これ絶対←さん» いえいえ、そこまで気にされなくても大丈夫ですよ…!全て見ていただけているんですね、嬉しいです!これからもどうぞよろしくお願いします!!! (2018年8月3日 10時) (レス) id: 61fbf2f6bb (このIDを非表示/違反報告)
兎危@緑君は天使です。これ絶対← - 妄りんごさん» そうですよね、すみません。りんごさんが謝ることじゃないです。私の我が儘なので...妄りんごさんの作品は全て見させて頂いているので、これからも応援してます。無理な事をお願いしてしまい申し訳ありません (2018年8月3日 9時) (レス) id: 83b7e38493 (このIDを非表示/違反報告)
妄りんご(プロフ) - 兎危@緑君は天使です。これ絶対←さん» コメントありがとうございます!折角のお申し出ですが、皆さまの混乱を防ぎたいのでご遠慮させていただきます。申し訳ない…。 (2018年8月2日 22時) (レス) id: 61fbf2f6bb (このIDを非表示/違反報告)
兎危@緑君は天使です。これ絶対← - 「ただそれだけのために」がとても印象的です。是非とも書いてみたいのですが...やはりダメでしょうか。私の文才で書けるとは言い切れませんが、とても書いてみたいなとおもう内容でした。没にするのは勿体無いほどでした。是非、書かせていただきたいです (2018年8月1日 20時) (レス) id: 556657c7c7 (このIDを非表示/違反報告)
妄りんご(プロフ) - ゆずもちさん» 学生の数年でしか経験できないものの尊さをあらわしたかったんですが、伝わったみたいですね。よかった!鬱々としているもののほうが書いていてしっくりくるんですが、ほのぼのをかけていた当時を思い出しつつ頑張りました!楽しんでいただけたようでなによりです! (2018年2月15日 21時) (レス) id: 0d5cadda90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:妄りんご
作成日時:2018年2月13日 19時

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