18話 ページ20
Aside
任務から翌日。
「うぅっ…、ひぐっ…。わぁあん……!」
朝の筋トレで鐵腸さんと鉢合わせるのが嫌で、たまらずトイレに逃げ出してしまった。
そして個室の中、昨日のことを思い出して泣き喚く始末である。
私のせいで鐵腸さんが怪我を負ってしまった。それも血だらけで酷いものだった。
私があの時、油断していなかったら。もっと上手く立ち回れていたなら。もっと強かったら…。
こうも自分を責めたところで、鐵腸さんの怪我が治る訳ではない。ましてや自分がより強くなる訳でもない。
だからこそ悔しくて堪らない。悔しくて堪らなくて、立ち直る気すら出てこない程だ。
どうして私はこの《猟犬》に属しているのだろう。
無力でありながら、正義だの何だの言っていて馬鹿馬鹿しく思えてきた。もういっその事死んでしまいたい。
そんな勇気何処にもないけれど_____。
考えが悪い方向ばかりに流転していく。その度涙が溢れて止まらなかった。
コンコン______
「うぅ…?」
ふと扉から軽くノックが聞こえた。
長居してる途中に満室になった…?いや、物音も何もなかったけど…。
顔中の涙を雑に袖で拭いてから取手に手を掛けた。
「五月蝿いんですけど」
「きゃぁあっ?!」
思わず甲高い悲鳴が出てくる。
扉を開けた目の前には、大層不機嫌そうな条野さんの姿がいた。
絶対にここに居てはいけない筈の条野さんがいたのだ。
「え?い、いやっ、なんで?!
こっ、ここ、女子トイレ…、女子トイレですよ?!」
「貴女の喚き声がいい加減鬱陶しいんですよ。場を弁えなさい」
「今の状況なら弁えるべきなのは条野さんでしょ!?絶対ここ入っちゃいけないですって!」
「全くいつまでも騒々しい人…」
「いやぁっ!」
突如片手首を掴まれ、個室から引き摺り出されるように勢いよく体を引かれた。
その力は軽く悲鳴をあげてしまう程に痛くて強いものだった。
そんな私を見ず知らず、条野さんは私を至近距離で見下した。
「貴女は誰にでも、自分にも甘すぎる_____」
「え…?」
「“自分が後悔しない為に誰かを救いたい”…、いつかそう言っていましたよね。
そんな柔な夢だから他人も自分も傷つけるんですよ。
いや、夢というよりも貴女の虚しくて幼稚な心構えが先ず柔と言った方が正確でしょうか」
条野さんの顰蹙した表情がみるみるうちに嘲笑に変わっていく。
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とっふ - わぁ……夢主ちゃん可愛い…最高ですね! (1月3日 17時) (レス) @page2 id: 521a35a539 (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - 最高です!続き楽しみにしてます!! (9月21日 20時) (レス) id: 2822ecfe2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2023年3月27日 22時