新人猟犬、修行中！-再編版-【条野採菊】【末広鐵腸】 (ページ11)

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9話ページ11

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今日は横浜市警との、異能集団によるテロ対策会議に出席する軽い出張がある。
隊長も副長もこれから別の要件ということで、急遽私が参加することになった。

そこまでは良かったのだ。

「新人の彼女を同席させる？」

「そうだ。ああいう緊張感も経験させた方がいいだろう。
何も発言させるとは言わない、隣に置いておくだけでいいぞ」

「…まぁその程度なら」

予想が的中してしまった。かと言ってそこまでの面倒事ではなく、断る理由も然程ないので生返事で応じた。

△▼△

「今回は会議の見学だけです。ただ私の隣に着いていればいいので」

「わかりました。よろしくお願いします」

送迎する車の後部座席に私と並ぶ彼女は、どこか緊張している様子だった。
とはいえ掛ける言葉も気力もないので会話は続かず無言になる。

この状況に気まずくなったのか、彼女は焦った様子で「あの、」と私に声をかける。

「条野さんも剣術得意なんですか？」

「…えぇ。ここにいる以上、軍刀を扱うことになりますから」

「そうなんですね…。でも、鐵腸さんが言っていました、条野さんの武器はそれだけじゃないって」

「そうですね。私は盲目故に他の五感が_______」

「盲目？！」

しまった。彼女の何らかのスイッチを押してしまった。

目を丸くして此方を見たままの彼女は更に焦り出す。
私とどう接すればいいか必死に頭を使っているようだ。あわあわと、声にならない言葉を発している。

自然と溜息が出てきた。

「気遣いは不要です。昨日だって違和感なく接していたでしょう」

「そ、そうですか…」

面倒になって端的に忠告すると、彼女は萎むように身を引いた。
だが内心は未だに困惑を抱えたままらしい。彼女の鼓動は速まり、若干の発汗すら漂わせている。

なんとまぁ、感情の忙しないめでたい人だろう。

静まり返った車の中で揺られながら、彼女から耳を背けるように窓のほうに顔を向けた。

△▼△

目的地に到着し、車から降りた。

彼女の速まったままの心臓は健在だ。本当にどれだけ衝撃を受けているのだろうか。

「じょ、条野さん、」

「…その手は何です？」

突然彼女の小さな手が私に差し伸ばされた。
その手は緊張しているようで、微かに震えていた。

「お手伝いします。少しでも条野さんの目になれるように…！」

「…は？」

自身の中で、何かが静かに沸騰した音がした。