ペチュニアの花と共に eml ページ26
求人が公開され、今年の三年生たちが広場に集まっていた。
その中の一人の私も、バーゲンセール並みに集まっているこの中で求人を睨んでいる。
予想通り、求人は少なかった。
去年は過去最高に求人がきていたのに、今年は過去最低に求人がきていない。今日本だけでなく、世界中が不景気なのだから仕方ない。
ただでさえ生徒数が多いこの学年で、数少ない求人を争わなきゃいけない。私には校内選考が通る自信がない。
勉強が出来るわけでもなく、かといって運動が出来るわけじゃない。自慢できるところは皆勤ということだけ。
未だに夢も決まっていない私が、これから社会人として生きていけるだろうか。いや、無理だ。
どの求人も募集人数が少ない。人気な企業は競争率が激しい。
もういいや。
求人を争う集団から何とか脱出し、トボトボと廊下を歩く。
就職をやめて進学にする？
いや、この学校は殆ど就職だ。進学の方が少ない。
「どうしよう…」
「どうかしました？Aさん」
「わっ…エーミール先生」
落胆している私に話しかけてくれたのは、この学校の先生の中で一番好きなエーミール先生だった。
優しくて、授業も分かりやすく、生徒に人気だ。
「先生、求人が少ないですね…」
そう口を開けば、エーミール先生は困ったように眉を下げた。
「えぇ、そうですね…。今年は前例をみないほど少ないです。生徒の皆さんの進路が心配です。Aさんは進路、決まりましたか？」
「それが、全然なんですよね…。やりたい事も無いし、目指してるものもないんです。安泰した企業に就ければいいと思ってたんですけど、どこもダメでした」
「そうですか…。本来ならばオリンピックの影響で求人も多くくる予定だったのですが、延期になってしまいましたから…。ホントに、やりたい事とかないんですか？」
「やりたい事、ですか…」
「えぇ」
私のやりたい事…。なんだろう。幼い頃は飼育員になりたいと思ってたけど、お客さんを喜ばせる技量もないしそもそも大学に行かなければならない。
企業を立ち上げたいとかそんな気もないし。
やっぱり浮かばない。
虚しく首を横に振れば、エーミール先生は悲しそうな表情を浮かべた。
他人事なのに、こんなに親身になってくれるエーミール先生のここに惹かれたんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 445人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
できるニート(プロフ) - 真由さん» ホントですか！そのコメントだけでも励みになります！更新頑張ります (2020年12月25日 12時) (
レス) id: ffbcb8a332 (このIDを非表示/違反報告)
真由(プロフ) - 初コメ失礼します...！最新話が鬼っほど大好きです...解釈一致が凄いです...ありがとうございます...！！！ (2020年12月25日 11時) (レス) id: 045f50c8f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：できるニート | 作成日時：2019年9月1日 14時
