鬱陶しい雨に賞賛を shp ページ3
"なんか雨降りそうじゃない?"
自転車置き場でクラスメイトの心配そうな声を聞き、私は視線をあげた。
今にも雨が降り出しそうなその黒い雲は、恐ろしい程ゆっくりと進んでいるように感じた。
天気予報では曇りだって言ってたし、カッパなんて用意していない。携帯用のカッパなんて、最早存在すらなかった。
学校から家までは1時間ほど掛かるが、信号に引っ掛かる事さえなければ10分程短縮出来るだろう。
仄かに雨が降ることを期待しながら、私は愛用の自転車に跨った。
轟く雷鳴とそれに負けじと打ち叩く雨。まさにバケツをひっくり返したような雨といえる今現在。
あんなに暑い外も、一気に気温が冷えとても身体が冷たい。
制服は肌に張り付き、鞄たちも雨に打たれて色を変えている。雨は降るだろうと予想はしていたが、こんなにも酷いなんて。
あと15分程掛かるというのに。雷に打たれて死ぬんじゃないか?
自分の生死の安否を予想していれば、後ろから名前を呼ばれた。
ちょうど信号も赤になり、私はブレーキを掛けて振り向く。そこには私と同じようにずぶ濡れになったショッピがいた。
「A先輩、まだ家遠いですよね?天気もこんな酷いんで、俺の家寄って行きましょう?」
雨に負けじと張り上げるショッピの声は新鮮だった。普段通りの声じゃ、掻き消されてしまうからね。
頷いて肯定の意思を見せれば、ショッピは自転車を側の脇道へと走らせた。
何気にショッピの家に行くのは初めてだ。ていうかそもそも私とショッピはそんな親密な関係では無い。本当に家に訪ねて良いのだろうか、という心配を雨に打たれながら考えていた。
家に着くとすぐにタオルを渡された。ショッピのお母さんが私の荷物を乾かしてあげると言って鞄を攫っていく。お母さんはショッピと同じで美形だ。
親に似るのは当然と言えば当然か。
「A先輩、風呂入ってください。濡れたままじゃ、風邪引くんで」
「え……でも」
「着替えとか全部こっちで用意するんで。帰りは自転車乗せて送ってくんで心配いらないですよ」
「……いいの?」
遠慮がちに尋ねれば、ショッピは小さく頷いた。
「俺だって好きな人には優しくしたいですよ」
「……ありがとう」
冷たかった身体が一気に紅潮する気配がした。
さり気なく言われた先程の言葉。本気にして良いのかな。
風呂場へと案内するショッピの大きい後ろ姿を見つめながら、私はタオルを強く抱きしめた。
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できるニート(プロフ) - 真由さん» ホントですか!そのコメントだけでも励みになります!更新頑張ります (2020年12月25日 12時) (レス) id: ffbcb8a332 (このIDを非表示/違反報告)
真由(プロフ) - 初コメ失礼します...!最新話が鬼っほど大好きです...解釈一致が凄いです...ありがとうございます...!!! (2020年12月25日 11時) (レス) id: 045f50c8f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:できるニート | 作成日時:2019年9月1日 14時