145 真剣で本気で。 ページ43
side.A
俺も大ちゃんもニノに言われたから翔ちゃんに宛てて手紙を書こうとしてるんだけど、お互いに名前を書いた後は一向にペンが進まない。
大ちゃんは腰をぐっと伸ばして立ち上がると、「ココアでも飲もっかな。雅紀もなんか飲む？」と言って15分程で席を立った。
書いてる内容は見てないけど、腰を伸ばしたり鼻をすするのは大ちゃんが悩んでいる時の癖だ。
そして同じココアを頼んだ俺はソファーに転がってゲームをしているニノに目をやる。
「何でニノちゃんがこんな時間に呼び出したのかようやく分かったよ」
「なんの事ですか？俺はただ気まぐれで呼び出しただけですよ」
「よく言うよ。相変わらず分かりやすい奴だなぁ」
携帯から一度も顔を上げる事はなかったけどホントにニノは気が回る奴で、それでいてそれを隠したがるシャイボーイなのだ。
ニノのそんな天邪鬼な性格は今に始まった事じゃないけど最初は全く意図が読めなくて困ったものだ。
「ねぇ松潤は？」
「潤くんならこのコーヒーを入れて直ぐに自分の部屋に戻りましたけど？てかあんたもおじさんもいつまでもこんな所でやってちゃまずいでしょうが」
俺の経った一言の質問にその倍以上の言葉が返ってくるのもよくある事だ。
「分かってるよ。でもいざ書くってなったら迷っちゃうんだよ」
俺や大ちゃんのそういう性格を分かっているからこそニノはこんな朝っぱらに呼び出して時間に猶予を与えてくれたというのに。
俺と言う奴はホントに…
「別にイイと思いますよ…それは相葉さんが翔ちゃんの事を本気で考えてるって事ですから。きっと翔ちゃんにもその思いはちゃんと届きますよ」
素直にその言葉はストンと胸に落ちた。
そしてニノの考えている事も、全て。
誰よりも翔ちゃんを想って行動していたのは素直じゃない天邪鬼なコイツだって。
「あーあ…何で俺ってニノには適わないんだろ」
「雅紀はピュアだからねぇ」
「え、大ちゃんってばそれ貶してんの？それとも褒めてんの？」
お盆にマグを二つ乗せた大ちゃんが「もちろん褒めてるよ」と笑う。
そんな大ちゃんの言葉にニノがクスッと笑ったのを俺は聞き逃さなかった。
後ろに居るから見てはいないが絶対今のニノはいい顔をしてるはず。
コレは幼馴染みで親友の俺だけが分かる特権って事で内緒にしておくか。
「大ちゃん、そろそろ部屋に戻ろっか。ニノー翔ちゃんのお相手よろしくねー」
ニノは片手を挙げてヒラヒラと手を振った。
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
