141 本音の行方は。 ページ39
side.N
年が明けて二週間。
あれよあれよという間に翔ちゃんの誕生日が近付いてきていた。
毎年出来る限り盛大な御祝いをしてる俺たちだけど今年は戸惑いがあった。
新年を迎えてからというもの少なからず俺と潤くんは翔ちゃんの変化を感じていた。
大野さんと喋っている姿が以前からは考えられないほど減ったこと。そして、分かりやすく俺達に別れを予期させる言動を取るようになった。
大野さんとの会話が減っているという事は恐らくその話ですれ違いが起きているのだろう。
口下手な大野さんが必死に止めても翔ちゃんには届かなかったと言うことだ。そしてそれが意味するのは俺たちの別れ。
潤くんは気付いた時からあからさまに顔にも行動にも出てたから、さり気なく声は掛けたものの俺も実を言えば不安で堪らない。
「ねぇ、おじさん」
「んー？どうかした？」
何故か俺の部屋で寝転がっていたおじさんは読んでいた漫画から顔を上げる事もなく、かったるそうに返事をした。
その普段と幾分も変わらない態度に呆れながらも「ここは俺のベットなんですけど？」と諭すと、ゆっくりと体を起こす。
そして元の時よりシワシワになったベットカバーを手で直すとポンと叩いて俺に座るように促した。
「何かあったか？」
大野さんらしい優しい声に軽くドキッとさせられ慌てて首を振る。
そんな俺を見て笑うおじさんの手にはさっきまで読んでいた筈の漫画はなく、いつしかその手は俺の肩に置かれていた。
「翔ちゃんから言われるまで何も言わないでおこうと思ってました。でも、いつまで経っても貴方が動からないから…」
「うん」
「俺、言いましたよね？一人で無理なら俺らが居るからって。何があっても傍に居るから頼ってくれって」
「うん」
特に言葉を返す様子もなくただ俺の言葉に相槌を打つだけの大野さんは俺が喋り終えたのを見計らって「他に言いたいことはないか？」と聞いた。
「どういう意味よ？」
「そのまんま。俺は翔くんの意志を尊重するって決めたから…だから翔くんが言うその時まで何も知らない振りで通してやって」
いつものように優しい顔をして微笑むおじさんを見てると自分の無力さに涙が出そうになる。
「潤くんだって気付いてる。きっと相葉さんだってそう」
「なら二人にもそう伝えてやって」
淡々と話す大野さんを見て翔ちゃんに勝てなかったのだと悟った。
でも、俺は諦めないから。
翔ちゃんの本音は本当にそこにあるの？
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
