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side.Kiuchi


以前、加藤先生から教えて貰った番号。
まさか本当に使う時が来るとは思いもしなかったが、今はとにかく急がなければいけない。

加藤先生に電話で状態を説明したところ準備をしておくから早く連れてきて欲しいと言われた。

この様子で車に乗せて翔くんの傍を離れる訳にはいかないから直ぐにタクシーを呼んで病院に向かった。

_


処置室に運ばれた後、私は手前の椅子に腰掛けて待っているように言われていた。

あんな状態になった理由は検討もつかないが少なくとも病気のせいだと言う事は分かっていた。

いつも子供達を見ている金森先生が慌てたように翔くんに声を掛けていたのは翔くんの荒い呼吸のせいだろう。

私が思うにあの症状は…


『木内さん』

『あぁ、西田さん』


突然、いつもお世話になっている看護師の西田さんに名前を呼ばれた。


『あの、翔くんは?』

『翔くんの処置終わりましたよ。先生からお話がありますから』


そう言って頷くと西田さんは私を立ち上がるように促し、ある部屋に案内した。

会議室のように広いその部屋には既に加藤先生が居た。


『どうぞ。掛けてください』


促されるままに椅子を引いて座る。

目の前には何とも言えない顔をした加藤先生。

西田さんには聞けたはずの言葉が先生を前にすると口にするのが怖くなる。


『翔くんですが今は落ち着いています。ですが念の為に今日一日は入院して下さい』


そんな私の心も分かっているのか先生が先に口を開いた。

その答えにホッとするはずなのに、胸騒ぎが、嫌な予感が収まることはない。


『今回の…』

『木内さんが考えていらっしゃる事と同じだと思います。今回は精神的な発熱から過呼吸まで引き起こし大変不安定な状態が続いています』

『やっぱりそうですか』


私の言葉に頷いた先生はもう少し様子を見ましょうとの判断を下したが、どうにも心は落ち着かなかった。

先生との話を終えて翔くんの病室に案内してもらい、翔くんの寝顔を見てから病室を出る。

心配しているであろう金森先生に電話を入れて、今日は病院に泊まる事も伝えた。


『ごめん。明日の昼前には帰れるから。子供達の事よろしくね』

(任せて下さい。真央先生も翔くんの事、お願いしますね。あ、でも無理はしないで下さい)

『ありがとう。それじゃあ』


電話を切って、真っ暗な画面を見つめ考えるのは翔くんの事だった。

私はあの子からいったい大切な人を何人奪ってしまうのだろうか。

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作者名:未翔 | 作成日時:2020年3月8日 20時

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