past.67 ページ4
side.O
「なぁ翔くん」
「うん？どうかした？」
優雅にトーストに被りつく翔くんが不思議そうな目で俺を見る。
「俺にさ、個展の話がきたんだ」
「え？ほんとに？智くんの？」
俺の突然の報告にカフェラテを吹き出しそうになりながらじっと俺の瞳を捉えて離さない。
コクリと頷けば、直ぐに椅子から立ち上がって俺の横に来て珍しく翔くんから抱き着いてきた。
「ぉ、翔くんど」
「おめでとう！おめでとう、智くん！」
何度も何度も"おめでとう"って嬉しそうに笑う。抱き着いて来た時に背中に回された手にギュッと力が入ってるのも気付いてる。
でも正直それぐらい翔くんが喜んでくれるだろうなって事は予想してた。それは決して自慢とかではなくて。
翔くんは出会った頃から俺の作品を好きでいてくれたし、個展を開く事が俺の夢だという事も知っているから。
「ねぇいつから？」
「詳しい事はまだ何も。打ち合わせだってこれからだし」
そっかと口を尖らせながらも翔くんは俺本人よりも嬉しそうにしてくれている。そんな恋人を有難く思いながら俺自身もトーストにパクつく。
先日行った初回の打ち合わせでは俺の今までの作品の殆どを展示する予定で、翔くんの話をしたら『是非とも描いてあげなさい』という返答をもらった。
だから今は打ち合わせを重ねながら、翔くんには内緒で密かに彼の絵を描いている。
翔くんの絵はこれまでも数え切れないほど描いてきた。それこそ俺の人生の中で一番多く描いていると胸を張って言える。
「しょーくん、そろそろ寝た方がいいんじゃない？」
キッチンから声を掛けても何の返答もないから慌てて翔くんが居るはずのソファーに行けば、ちゃっかり目を閉じてる可愛い人。
ソファーで横になって眠るその穏やかな顔を描かないという選択肢はない。
「楽しみにしててよ、翔くん。最高の個展にするからさ」
翔くんが起きないように優しくその髪を撫でる。松潤が居たらめちゃめちゃ嫉妬すんだろうな。
あまり長い時間を掛けると気付かれそうだし、ちゃんとベッドで休ませたいから30分も経たないうちに肩を揺する。
「んぅ、智くん。え？寝ちゃってた？」
「うん、すっごく気持ち良さそうだったから起こすの心苦しかったよ」
「あはは、ごめん」
翔くんは冷蔵庫からペットボトルを取り出して、大きく凹ましながらそれを飲むと「おやすみ」と階段を上がって行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 398人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
